江戸への松本土産「松本一本ねぎ」
松本一本ねぎは、松本の伝統野菜。
加熱すると、甘くてとろとろ、お鍋などに最適のねぎです。


伝統的栽培方法
根深ネギは、土寄せをしながら長く太く育てます。
種まき→ 定植→ 土寄せ→ 収穫と農作業は続きますが、種まきから収穫まで9か月以上もかかります。
そして松本一本ねぎには、植え替えという作業が入ります。
暑い時期に行う、この植え替えという作業が松本一本ねぎの特徴です。
種まき
9月から10月の間に蒔きます。遅すぎると寒さにやられて育たなくなります。
定植
翌春5月の連休前後で暖かくなり、太さが6~7ミリになったら定植します。ネギ苗を買ってきて植えるのもこの頃です。
土寄せ
定植1か月後くらいに根元に土をかけます。成長するにしたがって根元に土を寄せ、白い部分を育てます。
土寄せを繰り返し行えば、白い部分が多くなります。
ネギ坊主ができることがありますが、これはネギの花で種ができます。ネギ本体を育てたいので、できたらすぐとります。
植替え
夏の暑い時期に植え替えます。
大きく育ったネギを掘り起し、もう一度畝をたて、堀ったネギを立てかけて土を寄せます。植え替えをすることで、繊維が柔らかくなり、おいしい白い部分が長くなります。
収穫
盛り上げた土の片側をけずってネギを掘り上げ、土付きのまま乾燥させないように保存します。
保存
家庭によりますが、畑に穴を掘り、藁を敷いた中に入れて保存したりします。
松本一本ねぎを楽しむレシピ×8!
- ねぎのかきあげ
- ねぎをきざんで、お好みの野菜と一緒にかき揚げにする。

- ねぎのペペロンチーノ
- フライパンにオリーブオイルを入れて、にんにく・鷹の爪・ねぎを入れる。茹でたてのパスタを入れて、塩・こしょうで味を調える。

- ねぎのハンバーグ
- 玉ねぎの代わりに、ねぎを入れるだけ。

- ねぎのバターソテー
- フライパンにバターを入れて、炒めるだけ。お好みで塩・こしょう。

- 焼きねぎ
- ねぎをアルミホイルに包んで、薪ストーブの上に乗せるか、グリルなどで加熱する。やわらかくなったら出来上がり。そのまま食べても、お好みの調味料をかけても、美味しい。
※簡単で、ねぎの美味しさが1番シンプルにわかります。 
- ねぎのミルクスープ煮
- 鍋にねぎ5〜6本を6cm程の長さに切ったもの、ひたひたの水、スープの素を入れ中火にかける。
煮立ったら、牛乳1カップか生クリームを入れ弱火で煮る。塩・こしょうで味を調える。ねぎがとろりとしたら出来上がり。
※ねぎとスープを一緒に食べます。熱いねぎの芯がピュッと飛び出すので注意。 
- ねぎみそ
- ねぎ5〜6本をあらくみじん切りにする。少しのサラダ油でねぎを軽く炒める。
お好みの分量でみそ・砂糖・酒(甘めが好きならみりん)を入れ煮る。
みそがふつふつしてきて、とろりとしたら出来上がり。
※冷えるとみそが固くなるので、適当な固さで火を止めます。
※ご飯に合います。
おにぎりの具にしたり、焼きおにぎりに塗ったりして食べます。 
- ねぎとイカのソテー
- ねぎはぶつ切り・イカは食べやすい大きさに切る。フライパンを温めて、にんにくのみじん切りを入れお好みで香りづけする。
イカとねぎを入れて、火が通ったら、麺つゆで味付けして出来上がり
イカの代わりに、他の海鮮でもOK
※松本1本ねぎは、なんにでもあいます。 
種の保存活動
JA 松本市ねぎ部会では、おいしい松本一本ねぎの伝統的な栽培方法を守り、信州の伝統野菜として認証を受けました。「まがりちゃん」と愛称をつけて販売しています。
種についてもこだわりがあります。大正8年には設立されていた「松本一本葱採種組合」(設立当時の名称は「松本葱採種組合」)で採られた種に統一しています。ねぎは、ミツバチなどにより花粉が運ばれ受粉します。昔は、松本平のねぎはほとんどが松本一本ねぎでした。しかし、今では多品種のねぎが栽培されるようになり、放っておくと松本一本ねぎの種が雑種になり、本来の性質が変わる恐れがありました。平成21年から松本市農業協同組合と信州大学農学部、松本市農政課、松本市内の種苗会社が共同して原種に戻すための改良事業が行われています。
種を蒔いて苗を育て、生育状況を見て松本一本ねぎの特色が濃いものを畑から抜いて別の畑に植えなおします。翌年の5月に受粉をさせ、6月中旬から末に種を採ります。その種をまた9月の終わりから10月はじめに蒔いて同じ行程を繰り返して原種に近付けます。ご近所で他品種のねぎを作っている場合、花の咲く前の「ねぎぼうず」の段階で切らせてもらうほど神経を使う作業なのです。
モノクロの写真は昭和20年代に撮影されたものだと思います。(写真提供:松本一本葱採種組合長の青木秀夫さん)
「松本一本ねぎ」は曲がっているもの?
直売所などでは、曲がった松本一本ねぎもありますが、曲がっていない松本一ねぎも見かけます。
松本一本ねぎという名前は、品種に由来するものだからです。
では、この差はなぜ生まれるのでしょうか?
答えは、植え替えをしているか、していないかによるそうです。
伝統的な栽培方法では、夏の時期に植替えすることで、ねぎにストレスを与え、より甘く柔らかい曲がった「松本一本ねぎ」に育ちます。この作業が辛いことから、行わない生産者も多く、この結果、曲がっていない「松本一本ねぎ」も店頭で見かけるというわけです。
松本市では、市販されている「松本一本ねぎ」の種や苗から育て、植え替えをすることを推奨しています。伝統的な栽培方法による曲がった松本一本ねぎは、県による「信州の伝統野菜」にも認定されているもので、この生産を多くするために、「作付拡大奨励事業」を行っています。人気テレビ番組で松本一本ねぎが紹介されてから、供給が間に合わない状況ですが、こうした取組みにより栽培面積は年々増加しているそうです。
伝統的栽培方法の松本一本ねぎの柔らかく甘いおいしさを多くの方に味わっていただきたいものですね。
松本一本ねぎの歴史
江戸時代には既に栽培されていた松本一本ねぎ。江戸に行く際には松本名産のお土産として使われていたようです。
『三河後風土記』にはこんな話が残っています。
「徳川家の先祖であった有親(ありちか)が息子とともに、流浪の末に信濃国に落ちてきた。ここに鎌倉の勘気をこうむって故郷に帰っていた小笠原氏の三男・林藤助(はやしとうのすけ)がいた。
有親父子が尋ねると、藤助は雪の原へ出て兎を射止め、兎の吸物でもてなした。
以後、それが吉例となり、将軍家では、毎年元旦、雑煮にウサギの肉の吸い物を出す習わしになったという。その時兎の吸物といっしょに使われたのが、松本一本ねぎだ。』
江戸時代の俳諧師(はいかいし)、越智越人(おちえつじん)は「弥助まで御代に兎の御吸物」と、徳川家に伝わる「兎の吸物」という伝説にちなんで江戸城の祝い事を詠んだそうです。
(長野日報社刊「からい大根とあまつ蕪のもの語たり」参考)

この写真は、昭和10年以前に山岳写真家の横内勝司さんの撮影です。(写真提供:青木秀夫さん)
贈答品として荷造りされた松本一本ねぎの貴重な写真で、よく見ると送り先は東郷平八郎(元帥海軍大将1848年生〜1934年没)とあります。陸軍大将の荒木貞夫やアジア主義者の頭山満の名前も送り先に書かれています。荷札には「松本ねぎ」と書かれています。「松本一本ねぎ」と言われるようになったのはいつからなのか定かではありません。












