乗鞍岳・千町尾根 空中散歩
![乗鞍岳・千町尾根 空中散歩](https://i2.wp.com/visitmatsumoto.com/wp-content/uploads/2017/09/078.jpg?resize=500%2C375&ssl=1)
今回は松本市西部に聳える松本市の山、「乗鞍岳」(3026m)剣ヶ峰の、
その奥へと続く「千町尾根」登山道をご紹介します。
「千町尾根・登山道」は、乗鞍岳・剣ヶ峰のその先~岐阜県側へと続いて
いる、古の登山道なのです。
昔むかし、その昔、乗鞍岳が宗教の信仰の山だった頃のこと・・・。
「上牧太郎ノ助」さんと言う人が、明治29年から岐阜県側の旧朝日村
青屋地区から~乗鞍岳大日岳まで続く登山道を切り拓いたのでした。
そして道中の安全祈願のために88箇所に2体ずつ石仏を安置された
ようです・・・。それがこの「千町尾根・登山道」なのです。 その後、
乗鞍畳平への車道が出来て、各方面からの登山道が整備されたので、
戦後の近代化の時代に、この「千町登山道」は廃れていったのでした。
しかし現在、この「千町登山道」の廃道化を惜んで旧朝日町の有志の
方々で、登山道の整備とペンキでのマーキングをされているのです。
そして未だに見つかっていない石仏も探していらっしゃるようです。
「千町尾根」とは、そんな歴史と伝統ある古の登山道なのです・・・。
アクセス
乗鞍岳・剣ヶ峰へのアクセスと登山は、「乗鞍岳」のページをご覧
下さい。
乗鞍岳・剣ヶ峰~中洞権現(1時間ほど)
![079](/wp-content/uploads//2017/09/079.jpg)
「千町登山道」へは、剣ヶ峰山頂から長野県側へと15m程少しだけ下り、
南斜面にある、この大きくペンキで書かれたところからスタートです。
ここから赤ペンキの印を辿って踏み跡があるので、そこを歩いて行き
最初は少しガレた岩場を下っていきます・・・。
この「千町登山道」と書かれた赤ペンキ・・・。たぶん今年新しく書かれた
のだと思います。 登山道の印も再度塗られていて、とても分かり易く
なっていました。
![086](/wp-content/uploads//2017/09/086.jpg)
乗鞍・剣ヶ峰を裏側から見ると、こんな感じです。結構尖って見えます。
ガレた岩場を抜けると、「奥の院」との間の砂礫でザレた登山道になります。
ここまで来るとロープが張ってあるので登山道が分かりやすくなります。
![084](/wp-content/uploads//2017/09/084.jpg)
剣ヶ峰から少し下りたこの場所は、「コマクサ」の大群生地なのです!
たぶん7月下旬から~8月にここに来ると、「コマクサ」の大群生になって
いて、辺り一面がピンク色の絨毯になっているのだと思います!
今回は9月中旬にもなっていたのに、まだ咲いているコマクサさんが
けっこういらっしゃいました。濃いピンク色がキレイでした。
![088](/wp-content/uploads//2017/09/088.jpg)
そして、「上牧太郎ノ助」さんが設置した2体づつの「石仏」がありました!
この石仏は「十五番」と書かれていますが、剣ヶ峰から下りてきて最初の
石仏の番号は「十六番」の石仏があります。 これが、どこからスタートで
「一番」なのかは、分かりません。 「上牧太郎ノ助」さんは88箇所も石仏を
設置したらしいのですが、剣ヶ峰直下にある石仏が「十六番」だと2×16=32
という事で現在は32体だけしかないコトになります・・・。半分以上はまだ
見つかっていないのでしょうか?・・・。
![095](/wp-content/uploads//2017/09/095.jpg)
登山道を先へと歩いていって、「奥の院」の向こう側へと回り込むと、
そこは「ハイマツの海」になっていました! 文字通り「雲上」の
広大なハイマツの海になっていて、とってもキレイな場所です!
この辺りが、登山道を切り拓いた「上牧太郎ノ助」さんが愛したという
「千町ヶ原」なのでしょうか? 今回も歩いていても、本当に誰にも
会わない、とっても静かで落ち着いた、まさに雲海の上の登山道で、
ハイマツの海になっていると言う、とても気持ち良い広がりの場所
でした。
![091](/wp-content/uploads//2017/09/091.jpg)
コチラは「十四番」の石仏です。 右の石仏は顔が壊れていて、左の
石仏は背面板の頭の上の部分が割れていたのを修理した跡があります。
かなり風化が感じられ、朽ち果てそうになっていますが存在感はあります。
左の石仏は「摩利支天」に似ている手が10本以上ありそうな石仏ですが、
何の神様なのでしょうか? 詳しくは分かりませんが気になります。
![097](/wp-content/uploads//2017/09/097.jpg)
コチラは「十二番」の石仏です。 途中の岩と岩の間にありました。
この「十二番」の石仏は、かなり風化はしていますが、壊れていなくて
2体ともに、五体満足でした。
![103](/wp-content/uploads//2017/09/103.jpg)
そして、その後登山道は、「ハイマツの海」の中を泳ぐようにして進んで
いきます。 突き抜けるような青い空、まさに雲上を歩いていく道!、
この辺りも、とてもなだらかで優雅な登山道なので、「千町登山道」は
歩いていて本当に気持ちイイ道でした!
![108](https://i0.wp.com/visitmatsumoto.com/wp-content/uploads/2017/09/1081.jpg?resize=500%2C375&ssl=1)
そして、今回の目的地である「中洞権現」の分岐点に到着しました。
昔、ここには「社」や鳥居もあったようですが、今はその跡や面影も
見つかりませんでした。 あるのは「十一番」の2体の石仏だけでした。
その「十一番」の石仏も、左側のは頭が無くなっていました・・・。
そして、「乗鞍岳」を裏側から見ると、こんな感じに見えます。乗鞍岳は
長野県側から見ると端正な三角形に尖っているのですが、岐阜県側から
見ると優雅に丸い形をしています。これは乗鞍岳の23峰の中の「大日岳」
です。 一番右の頂が「奥の院」です。 剣ヶ峰は、その少し向こう側に
隠れていて、山頂は見えませんでした。
![115](/wp-content/uploads//2017/09/115.jpg)
今回僕たちは、この「中洞権現」でお昼ご飯をゆっくりと食べて、
コーヒーも淹れて、紺碧の空の下でゆっくりと気持ちよく寛いでました。
「雲上のハイマツの海」歩き、とても気持ちよかったです。
「千町尾根」の登山道は、この先も続いています。この先は1時間程で
奥千町避難小屋があり、その先は2つの尾根に分かれていて、丸黒尾根
の経由では日影平まで7~8時間程、九蔵ノ尾根経由では、九蔵集落まで
です6~7時間程です。(下りのコースタイムです)
そして昼食後は僕たちは、また来た道を歩いて帰っていったのでした。
![113](/wp-content/uploads//2017/09/113.jpg)
9月なので、秋の紅葉の気配も少々・・・。
![118](/wp-content/uploads//2017/09/118.jpg)
そして、足元には、ガンコウランの森の幾何学模様が敷き詰めてありました。
黒い実もチラホラありました・・・。
乗鞍岳登山は、通常なら畳平までバスで上がり、そこから周辺の峰々の
摩利支天岳、大黒岳、魔王岳、そして主峰剣ヶ峰が一般的なのですが、
少し足を伸ばして歩くこともできます。この「千町尾根」の登山道も
そんな中の一つで、標高の高いところを水平移動出来て、まさに雲の
上を歩くことが出来るので、とても気持ちの良い歩きが楽しめます。
そして、石仏を散策しながら歴史や昔の登山に思いを馳せることも
楽しいです。そんな乗鞍岳の懐の深さを楽しんでみてください。
【登山者・記者:ハタゴニアン】