十文字峠
十文字峠(じゅうもんじとうげ)は南佐久郡川上村と埼玉県秩父市を結ぶ古くからある峠。標高約1,970m。(国土地理院の地図では1,970mくらいなのですが、2,035mとされていることもあります) 信州梓山周辺の山村の人々は生活物資を得るためや三峯神社参りなどで多くの人が信州から武州へと峠を越えて行き交いました。古くからある峠道には、旅の安全を願って一里(約4キロ)ごとに石仏が置かれています。
アズマシャクナゲの群落があることでも有名。十文字峠小屋裏手には約1万本のシャクナゲがあり「乙女の森」と呼ばれています。
最後に2010年6月6日の十文字小屋周辺のアズマシャクナゲの様子を記載してあります。
アクセス方法
マイカーの場合
長野自動車道「松本I.C」から高速道路に乗り、南に向かいます。「岡谷Jct」で東京方面に進み、山梨県の「長坂I.C」で下ります。県道32号線を東に向かい、左折して国道141号線に入ります。北に向かい、再び長野県に入ります。信号機「市場」を過ぎてから右折して、県道68号線に入り川上村に入り、68号線をそのまま進みます。レタスなどの高原野菜の畑の中を通り過ぎ、さらに進むと毛木平(もうきだいら)駐車場に着きます。松本からの所要時間は2時間ちょっとです。
毛木平駐車場 標高1433m 登山開始8:30
8時過ぎに駐車場に着いたころには既に満車に近い状態でした。アズマシャクナゲのシーズンは混むとは聞いていましたが、驚きました。駐車場には水洗トイレがあります。
広い林道をしばらく歩きます。左に少し入ると石像と昔っぽい道の案内版があります。「三峰山大権現 右ハ山道 左ハ江戸道」私たちは江戸道に行きます。そこからさらに林道を歩き、駐車場から5分ちょっと歩いた所に分岐があるので林道から外れて左にそれます。まだ新しそうな「千曲源流挟霧橋」を渡ります。
橋から10分ほどすると「石像一里観音菩薩」があります。昭文社の山と高原地図には、「五里観音」と書かれています。十文字峠を挟んだ埼玉県側には「四里観音」や「三里観音」があります。
水場 標高1540m付近 9:00
石仏から10分もしない所に水場があります。パイプからおいしい水が流れ出ています。この辺りはコケはありますが、林の中には下草がほとんど見られません。シカが食べてしまうようです。毒草のトリカブト、ハシリドコロ、コバイケイソウなどは大きく育っていました。
シャクナゲの木はありますが、花が咲き終わった後でした。
水場 標高1740m付近 9:35
八丁坂の途中に水場があります。「水」と書かれた案内板から少し下に降ります。ここの水場は岩から流れ出ています。こちらもおいしい水です。
カタバミの花が咲いていました。シカに食べられなくてよかったですね。
途中にブルーシートの下に積み上げられた薪がありました。「薪を小屋まで運んでください。お願いします。十文字小屋」と張り紙に書かれています。人助けだと思い、軽めの薪を探し出して運ぶことにしました。
傾斜がきつくなります。つづら折りの坂をゆっくり登ります。
八丁坂ノ頭 標高約1870m 10:05
大きな薪が2本置かれていました。あまりに大きくて運ぶのを投げ出してしまったのでしょうか?薪を持っていなかった仲間がザックにつけて運んでくれました。
ここから先は楽々です。登山道の下には、薄いピンク色のシャクナゲが見え始め、峠の様子を期待させます。
十文字峠 標高約1970m 10:35
十文字峠付近はシカよけのためのネットが張り巡らされています。
ネットの向こうにシャクナゲの花が間近に見られました。花が枯れている木のほうが多かったのですが、それでもきれいに咲いているものもあり「間に合って良かった」と感激しました。今年2009年は例年よりもシャクナゲのピークが1週間~10日くらい早かったのではないでしょうか。(2008年は5月29日に色づき始め、6月13日~20日が見ごろだったようです。2009年は5月21日に色づき始めました。6月1日八分咲き。)
十文字小屋周辺散策と昼食 10:35~12:00
小屋は峠のすぐ近くです。十文字小屋で運んできた薪と一緒に記念撮影。
「乙女の森」に向かいました。ここは日陰になるらしく、シャクナゲのつぼみもまだありました。森を見渡せるように高台が作られています。登ってみると、「最盛期には相当素晴らしいだろう」と思わせるシャクナゲの群落が広がっていました。
下山開始 12:00
ゆっくりゆっくり自然観察をしながら下りました。通過時間は下記の通り。
八丁坂ノ頭 12:25
岩の水場 12:45
パイプの水場 13:25
毛木平駐車場 14:10
上の写真は下山途中で見つけたキノコ。悪臭でハエを呼び寄せていました。さすがにシカも食べる気にはなれないでしょう。
駐車場の東側の林道脇にはズラ~っとベニバナイチヤクソウが咲いていました。それは、それは見事です。下山後ゆっくり見るといいですよ。シカに食べられなくてよかった~。
感想
アズマシャクナゲの花の色は何とも言えない良い色ですね。「乙女の森」のようにまさに乙女を思わせる優しさがありますね。毛木平からのルートは眺望は良くありませんが、比較的楽に行けるのでお薦めです。昔、多くの人が行き交った街道なので、休憩したい頃にちょうど水場があったり登りきったような場所があったりして無理なく登れます。
しかし、シカの食害には驚きました。冬の山のように下草がない森が続いていました。十文字小屋付近のネットに覆われた中では草が生い茂っていました。本当はこの状態が普通なのですが、山の中は異常事態でした。もしも大雨が降ったら下草がないのでむき出しの大地に雨粒が当たり、地面を削りながら泥水が流れ濁流になったら大変です。一刻も早く手を打つべきなのでしょうが、シカに打つ手はあるのでしょうか?
【2009年6月13日実施 登山者・記者:アルプスちえみ】
2010年6月6日のアズマシャクナゲの様子
十文字峠までの登山道から少し離れた場所ではきれいに咲いています。
←ミツバツツジも見事です。
十文字小屋周辺のアズマシャクナゲは見頃になってきています。
日当たりの良い所は完全に花が開いています。
乙女の森でも咲き始めています。6日はとても天気が良かったので、シャクナゲの葉が日光で反射して上手く写真撮影ができませんでしたが見事に花が咲いていました。つぼみもたくさんあるのでまだまだ楽しめます。
水場に行く途中のアズマシャクナゲはほとんどつぼみでした。長く楽しめそうです。
毛木平駐車場近くのベニバナイチヤクソウはほとんど花が咲いていませんでした。2個だけ花を見つけました。後もう少しで辺り一面咲きそうです。
【市民記者:アルプスちえみ 2010年6月6日追記】