北アルプス・裏銀座、縦走。

所要時間:4日間  レベル:
山行日: 2022.07.24
23
標高:3180m
北アルプス・裏銀座、縦走。

北アルプスの縦走ルートである「裏銀座」は、大町市奥にある七倉温泉から入山して~日本三大急登である「ブナ立」を登り、~烏帽子~野口五郎岳~水晶~鷲羽岳~三俣蓮華~双六~西鎌尾根を登って→槍ヶ岳へと通じる、壮大な縦走ルートで、登山者憧れの縦走ルートなのです。(ちなみに表銀座は燕~大天井岳~東鎌尾根登って→槍ヶ岳です。) 今回僕たちは、この裏銀座縦走ルートを4日間かけて歩いてきました!

<アクセス>

裏銀座登山の起点になる七倉温泉へのアクセスは、以前の記事をご覧下さい。→「七倉温泉~ブナ立

 

1日目、七倉温泉~烏帽子小屋~烏帽子岳。(7~8時間程)

七倉温泉から先の道路はマイカー規制されていてこれ以上先へは入れません。七倉温泉の前から専用のタクシーが出ていますので、タクシーに乗って高瀬ダム上まで上がります。ちなみに歩いてでも入れますが、1時間半程かかります・・・。

 

高瀬ダムの上でタクシーを降りたら、雨が降っていました・・・。このダムの先(右側)の遂道を通り抜けて、先の吊り橋を渡り、「ブナ立」登山口へ向かいます。縦走の最初が雨なんて、ちょっと不安になります・・・。

 

この看板が「ブナ立」登山口です。ここから日本三大急登の一つであり、北アルプス三大急登にもなっている「ブナ立」が始るのです。登り始めから建て付けの階段を登るように整備されていて、いきなり急な登りです・・・。

 

その後も、前半に急登が続いていき、後半は比較的マシな尾根道になります・・・。「ブナ立」には①~⑫の番号看板があり、下から⑫番、上に上がっていくにつれて番号が小さくなっていきます。そして最後の0番が烏帽子小屋に到着するようになっています。それぞれの看板は休憩出来るように少し広くなっている場所につけられていました。

 

僕たちは大体5時間ほどで烏帽子小屋に到着しました。ブナ立を登って行くにつれて晴れてきて、小屋に到着した時には青空も見えてきていました。この日はこの烏帽子小屋で宿泊しました。 1日目の時間が余ったので、この後に、予定していた通り烏帽子岳へ登りに行きました。

 

烏帽子岳は正三角形で天を突き刺すように聳える美しい山です! あの穂先に登れるのです。雨だったら中止にしようと思っていたのですが、晴れて来ていたので登ってみることにしました。烏帽子小屋から大体1時間半ぐらいでした。

 

やはり最後は岩場登りになりました。でも、鎖もしっかり取り付けてあり、ホールドもしっかりあるので、登り易かったと思います。高所恐怖症の方は止めておいた方がいいかも知れません・・・。

 

烏帽子岳(2628m、200名山)に登頂です! 山頂に到着した時に雲が取れてきて、バックには三ッ岳の峰も見えました!

この後は、烏帽子小屋に宿泊。緩やかで快適な小屋宿泊を楽しみました・・・。

 

 

<2日目、烏帽子小屋~野口五郎岳~水晶小屋~鷲羽岳~三俣蓮華山荘。(8時間程)>

2日目の早朝、小屋のトタン屋根をバタバタと猛烈に叩く音とジェットコースターのようなゴオォォーー!!という爆音が鳴り響いていて目が覚めました!・・・。まさか?!と思ったのですが、朝起きたら暴風雨が降っていたのです。僕たちは早朝5:00に出発予定でしたが、天気予報は回復傾向だったので、少しでも雨が収まらないか?とスタートを遅らせてみました・・・。5:30、6:00、と停滞していて時間がだけが過ぎて行きますが、雨は収まりません。縦走を中止してブナ立を下りて帰るという選択肢もあったのですが、天気予報が回復傾向だったので6:30に大雨の中、エイッ!と気合でスタートしていってみました・・・。

真っ白の霧の中をズブ濡れになりながら黙々と歩いていきます・・・。時々強風に飛ばされそうにもなりました。山の稜線は、写真のように少し見えたり、真っ白で20mも見えなくなったりを繰り返しました。

 

雨でズブ濡れになりながら黙々と歩いて2時間半ぐらいが経った頃、ようやく次の野口五郎小屋に到着しました。僕たちはレインウェアを着ていたのにかなり濡れてしまったので、小屋でインナーウェアを変えたり装備を少し変更したりさせて頂き、温かいコーヒーも頂きました。野口五郎小屋で少し休憩していると、雨が小雨になってきました! なので僕たちはこのまま裏銀座縦走ルートを先へ進んでいくことにしました。

 

野口五郎岳の山頂に登頂しました(2924m)・・・。辺りはホワイトアウトで真っ白!、何も見えませんでしたー。

 

その後も、真っ白なホワイトアウトと雲が途切れて少し向こう側の山が見える状態を繰り返しながら、そしてアップダウンを繰り返しながら稜線を進んで行きました。雨は止んだり小雨がパラついたりでしたが、ザーッと降るような感じはもう無くなってきていて、だんだん回復してきているのを感じました。でも、せっかくの稜線縦走なのに、未だに景色は見えてきませんでした・・・。

 

真っ白なままで水晶小屋に到着しました・・・。晴れていればこの先の水晶岳にも登る予定だったのですが、真っ白なままでは疲れるだけかなと思って、水晶岳は諦めて先に進むことにしました。水晶小屋ではお昼ご飯を頂いて大休止をさせて頂きました。

 

水晶小屋を出発して分岐を鷲羽岳方面へ向かいました・・・。真っ白なままでは分岐点から巻き道を通ってこの日の三俣蓮華山荘へ向かう道もあったのですが、この日のハイライトの一つである鷲羽岳から見る「鷲羽池と槍ヶ岳」をどうしても諦めきれなかったのです・・・。なのでとりあえず鷲羽岳には登っておこうという事になり、一路鷲羽岳に向かいました・・・。

 

鷲羽岳の最後の登りに向かいます。もう雨は降っていませんが、依然として霧の中で景色は真っ白。でも、空は少しずつ明るくなってきています。この日はココまで全部の山頂でホワイトアウトの真っ白状態だったのです・・・。最後の鷲羽岳の山頂では少しぐらい景色が見えるのか?!・・・。ちょっとでも見えてほしい!、まるで祈るような気持ちで、最後の急登を越えていったのでした。

 

そして!、奇跡は起きた!!
こんな事ってあるのか?!と思う程、まるで奇跡のように鷲羽岳(2924m)の山頂に登った瞬間に雲が途切れて、山頂ではまさか!の晴れになって、青空と槍ヶ岳山頂、そして東側の景色が観れたのでした!
 
登って来た自分達が一番驚いていました・・・。この日のここまでの雨の修羅場を抜けてきた苦労が一瞬で報われた瞬間でした。本当に感動的でした! 不覚にも、神は本当に居たんだ!とか思ってしまった・・・、それぐらい奇跡のように思われた鷲羽岳の山頂の青空でした。

 

鷲羽岳山頂からは槍ヶ岳も見えてきて、この「鷲羽池と槍ヶ岳」の景色も見えたのです! この景色を見に、僕たちはここまで歩いてきたのです! 槍ヶ岳の西鎌尾根からスゴい雲が流れてきていたので、槍ヶ岳山頂は何度も見えたり隠れしていたのですが、それでもこの裏銀座ルートのフラッグシップ的なこの光景を見る事が出来て、本当に良かったです!・・・。 いつまでもこの余韻に浸っていたいと思う、奇跡的に晴れた鷲羽岳山頂なのでした。
 

奇跡の青空な鷲羽岳山頂を後にして、三俣蓮華山荘へと向かいます。岩石でガラガラな滑り易い登山道の下りは、本当に注意しながら歩いて下りていきました。

 

そして、三俣蓮華山荘に到着した時には、この日の前半の大雨は嘘だったように晴れ渡ってきたのでした。諦めずに縦走してきてよかったです! ここでテント泊の受付を済ませて、この日はテント場でテント泊しました。

 

まず、テントを張り、山荘で買って来たビールを喉に一気に流し込んだ後に、鷲羽岳山頂での奇跡の晴れにようやく乾杯をしました。そして、ここまで重い思いをして運んできた食料で夕食を作って頂きました。気持ちのイイ風が吹いていて、至福の時間が流れて行ったのでした・・・。

 

三俣蓮華のテント場からは、槍ヶ岳~北鎌尾根や鷲羽岳が素晴しく美しく見えるのです! この日の最後の夕焼けも、槍ヶ岳がオレンジ色に染まり、感動的だったのでした!

 

<3日目、三俣蓮華山荘~双六~西鎌尾根~槍ヶ岳~殺生ヒュッテ。(9時間程)>

この3日目は、裏銀座縦走ルートのハイライトである槍ヶ岳・西鎌尾根を登る日です。

三俣蓮華のテントでお湯を沸かして朝食を食べて、テントをかたづけて、早朝5:15頃に出発していきました。バックには、昨日奇跡を魅せてくれた鷲羽岳が一際大きく聳えていました。

 

三俣蓮華から~双六へは3つのルートがあります。三俣蓮華岳の山頂や双六岳山頂を通っていくルートと、その下を巻いて進んでいくルートです。この日の朝の三俣蓮華岳は雲の中で真っ白だったので、僕たちは三俣蓮華岳山頂を踏むルートには上がらずに、巻き道ルートを選択して進んでいったのでした。 途中、だんだんと雲が晴れてきて、これから向かう槍ヶ岳や穂高連峰の峰々も少しずつ見えて来ました。あの尖った槍ヶ岳の先っぽまで、今日は歩いていくのです!

 

双六への巻き道ルートを進んでいくと、ルートの雄大な広がりは全部お花畑になっていて、僕達が行った時期は本当にたくさんのお花が咲き乱れていて、素晴しかったです! この巻きルート、ただの巻き道だと思っていたら、槍~穂高岳を真正面に見ながら進んで行く事が出来る素晴しいルートなのでした! そして、大体の登山者は山頂経由ルートで行くので他の登山者がほとんど居なくて、静かで閑静なトレッキングを楽しめたのでした。
 
槍ヶ岳へ向かう方向に進んでいく時は、この巻き道ルートを僕たちはオススメしたいと思いました。

 

そして双六小屋に到着です。 ここでトイレを借りて食料を補給して、ココからいよいよ北アルプス裏銀座ルートのハイライト!である「槍ヶ岳、西鎌尾根」へと突入していくのです。
 
裏銀座縦走ルートのハイライトは、僕達的にはやはり、前日の「鷲羽岳山頂から見える鷲羽池と槍ヶ岳」、そしてもう一つは、ココから始る「槍ヶ岳、西鎌尾根」の登りだと思います。この双六小屋から西鎌尾根を一気に登り上げて、槍ヶ岳をずっと真正面に見て向かって突き進んでいくのです!
 
西鎌尾根の最初は、樅沢岳という小さな峰に上がるトコロから始まります。いきなり急登で息が一気に上がっていくのだが、何とかこらえながら登って行くと、樅沢岳の山頂はスグに到着。バックはもう朝靄の雲が消えて無くなり、文字通り北アルプス最奥部の大パノラマのが広がってきました! そしてここの展望台の大パノラマも素晴しいです。晴れたら、槍ヶ岳から~穂高連峰の全てが真正面にドオォーーン!!と大迫力で見えるのです。

 

樅沢岳山頂からは、いよいよ裏銀座のハイライトである西鎌尾根が始まりました! この槍ヶ岳のスカイラインをず~っと目の前に見ながら稜線上をズンズンと進んでいくのです。
 
晴れて景色を見ながら裏銀座のハイライトを歩ける幸せと、自分達の夢であったルートを突き進んでいける事への感謝の気持ち、そして少しの不安と挑戦を胸に、かみしめるように歩いていったのでした。

 

が、しかし!・・・、そんなに簡単には終わらないのです・・・。
硫黄乗越を過ぎた辺りから風が強くなってきて、一気に雲が出てきて、あんなにキレイにクリアだった景色が一瞬で真っ白なホワイトアウトになってきてしまったのでした・・・。一抹の不安がよぎります・・・。裏銀座一番のハイライトである西鎌尾根を上がって槍ヶ岳に登っても、また真っ白なままなのか?!・・・。
 
そして、西鎌尾根はさらに岩場になっていきます・・・。稜線は細いナイフリッジのような場所もあったり、この画像のような鎖場のような岩場もありました。それでも、真っ白になっても、もう僕たちは前に進んでいくしかないのです。

 

モクモク湧き出してくる雲を抜けて上に出ると、また景色が広がってきて槍ヶ岳がまた見えてきました! 左俣岳から先は、雲の中でホワイトアウトとこの画像のようなクリアな景色とが交互になっていたのでした。
 
本当にもう、槍ヶ岳が手の届きそうなトコロまで来てしまいました。夢だった、憧れだった裏銀座、そしてハイライトである西鎌尾根も、もうスグ終わってしまうのです・・・。一歩ずつ登りながら、僕達の心の中には、早く槍ヶ岳山頂に立ちたい!と言う欲望と、夢の時間が終わってしまいそうな哀しさ、そしてここまで進んでこれた感動が!
渦巻いていたのでした・・・。

 

そして、千丈乗越に到着してしまいました・・・。。槍ヶ岳も小槍を右に携えて見えていたのです! 西鎌尾根は、とうとう!ココで終わってしまったのでした・・・。 この後は砂礫と岩のリッジを槍ヶ岳の穂先まで突き上げるように登って行くのです。残りはもう僅か!

 

千丈乗越からは、最後の最後である飛騨沢のザレた九十九折の登山道を、ゆっくりと一歩ずつ登って行きました。ここまで3日間登ってきた僕たちの足はかなり痛んでいたので、最後はゆっくりと登っていったのでした。
 
そして、三俣蓮華を出発して、約7時間ほどで槍ヶ岳山荘に到着しました! こうして僕たちの裏銀座縦走ルートの踏破が終了してしまったのでした! 槍ヶ岳まで来てしまうと、もう僕達の地元である松本市です。なので、地元に帰ってきた感がいっぱいになっていたのでした。
 
槍ヶ岳山荘に来たら、いきなり!大勢の登山者の人達で混み混みになっていました・・・。裏銀座ルートではここまであまりたくさんの人に出会わなくて、とても閑静な縦走登山をゆっくりと自分達のペースで楽しめたのですが、槍ヶ岳山荘はさすがにメインの場所なので非常に多くの人、人、人で、ちょっとビックリでした・・・。

 

槍ヶ岳の山頂に上る人の列も非常に多かったのですが、でもここまで裏銀座縦走ルートを歩いて来て、槍ヶ岳山頂に登らないわけにはいきません。しっかりと槍ヶ岳山頂(3180m)に登頂しました!

雲が多くて穂高側はあまり見えませんでしたが、それでも槍ヶ岳山頂はどこまでも青く澄んだ空が広がっていて、僕達を迎えてくれました。 そした僕たちの心はどこまでも静かに広がって行き、青空の中に融けて重なって広がって行き、開放感と達成感、そして優越感に満たされたのでした!

 

槍ヶ岳の山頂から下ってきて僕たちは、槍ヶ岳山荘の人混みの喧騒を避けて、殺生ヒュッテまで下りていきました。 3日目の宿泊は、この殺生ヒュッテのテント場で、静かなテント宿泊にすることにしたのです。メインの場所の人混みを避けて、あえて静かにメインルートを落ち着いて楽しむ、静かな殺生ヒュッテの方が、僕達には合っているのです・・・。

そして、テントは槍ヶ岳の真下に張りました! この日の宿泊も、槍ヶ岳を真正面に見ながらゆっくりとビールを飲んで過ごしたのでした。

 

<4日目、殺生ヒュッテ~上高地。(7時間程)>

4日目、裏銀座縦走登山の最終日。最後の日は上高地へと下れば良いだけなので、気分的には楽なのですが、今日でもう縦走が終わりなので、かすかな寂しさが心の縁をなぞっていたのでした・・・。

朝4:30に起きてテントで朝ごはんを食べて、テントを撤収して、槍沢を下っていきます。時折朝日が差してきてハイマツの緑の絨毯を照らして、まるでグリーンカーペットのようになっていて、槍沢はとても美しかったです! ここまで裏銀座を踏破してきた僕達を祝福してくれているかのようでした。

 

槍沢をズンズンと歩いて下っていき、大曲~水俣乗越~ババ平~、そして槍沢ロッジで大休止をしました・・・。

 

そして、横尾に到着です。ここまで来ると本当に登山者の方が非常に多いです。やはり上高地~涸沢や、~槍ヶ岳はゴールデンルートなのだと感じました。

 

そして最後は、横尾~徳沢~明神~上高地の水平移動をゆっくりと歩いて帰って行ったのでした・・・。この横尾~上高地間の平行移動が、いつも登山に来ると長くてイヤなのですが、今回だけは、なぜか勝利の美酒に浸るように達成感で光悦な森の中を歩いて帰れたのでした。

 

そして、上高地に到着して、僕達の裏銀座縦走ルートの登山が全て終わったのでした! 上高地から見える穂高連峰を見ながら、「あ~、あのず~っと向こうから歩いてきたんだなぁ~」と、感慨深い想いに包まれていたのでした。
 
<感想>
今シーズンの夏も天気がとても不安定で、最初は雨やホワイトアウトもあったり、辿り着けなかった山頂や見えなかった景色もあったのですが、北アルプス裏銀座縦走ルートは、控えめに行っても最高でした! 特に、ハイライトである鷲羽岳山頂から見える鷲羽池と槍ヶ岳が美しかったですし、双六周辺の緩やかな広がりも雄大でしたし、西鎌尾根はお花畑がいっぱいあって花の時期に行くと素晴しいです。そして、稜線を伝ってどこまでも歩いていける縦走は、本当に気持ちイイです。人生で一度は歩いておくべき縦走ルートだと思いました。
 
【2022年7月23日~26日(4日間)。登山者、記者:ハタゴニアン】