サロンあがたの森

2025.10.19
1
サロンあがたの森

市民文化講座「サロンあがたの森」、10月18日は「いつも優しかった辻邦生先生の思い出」と題して、あがたの森文化会館講堂・第一会議室で元中央公論新社書籍編集局長笠松巌氏の講演がありました。現在旧制高校記念館ギャラリーで開催されている「辻邦生展」との連動企画で、氏は辻邦生担当の編集者として実際に接して感じたこと、思い出などを話されました。

辻邦生はここ松本の旧制松本高校で多感な青春時代を過ごし、東大仏文、海外留学などを経て、日本を代表する作家となりました。著作も多く、そのすべてを把握することは困難ですが、どれを選んでも文体や構成が緻密で、何よりも生きること美を追求することに真摯な意志を持った作品ばかりです。日本の文学の一つの到達点と言っても過言ではありません。

 

その辻邦生と長い間編集者として接した笠松氏は、辻邦生の作家としての魅力、人間としての魅力をふんだんに、時には楽しいエピソードも交え話され、時間があっという間に過ぎました。

コーヒーブレイクをはさみ質疑応答の時間があり、編集者だからこそ知り得る踏み込んだ事情なども話題に上り、大変充実した講演会でした。


この日、隣の講堂では「信州未来フェス」という県知事も市長も登壇する大きなイベントがありましたが、一方はこれからの地域を展望する催し、もう一方では地域が育んだ風土や文化を糧として成長した作家のことを再認識する講演会が同じ建物内で同時に開催され、誰もが学びそして行動する松本の豊かな文化を感じずにはいられませんでした。


今年は辻邦生生誕100年ということで、ゆかりの地で巡回展が開催されています。開催場所毎にテーマや趣向を変えています。各地を巡って辻邦生の多面性を体感するのも良いかもしれません。

11月には「西行花伝」をモチーフにした琵琶コンサートも開かれます。