普通選挙運動発祥の記念像
中央図書館の正面玄関東側に彫刻があります。
数人が集まって話し合っているように見えます。何かを訴えているようにも見えます。
普通選挙運動発祥の記念像です。
足元にはその由来を記したものがあります。
実際にその場に立って、文字を読むのは難しいこともあるかと思い、書き写したものをここに示します。
記念像建立の趣意
近代日本における普通選挙運動は、わが国の政治史上に特筆すべき一大改革をもたらしたものであるが、全国に先駆けて松本ではじまったのである。
この普選運動発祥の端緒となったのは明治二十三年、明治政府が国会開設にあたり、国民四千万余人中、衆議院議員の選挙権のあるものわずかに四十五万人という制限選挙を採用し、これに固執して国民の選挙法改正の要望を無視した点にあった。
明治三十年七月、「普通選挙期成同盟会」の看板が、松本の緑町に掲げられ、「普通選挙を請願する趣意」が日本最初の普選実現運動の宣言として発表された。普選実現運動は財産等による制限選挙を廃し、国民に平等に選挙権を与え、藩閥政府にかわる立憲政治の実現をめざすものであった。主唱した中村太八郎・木下尚江及び降旗元太郎らは、自由民権運動で全国に知られた松本奨匡社の影響下に育った世代である。かれら松本平の有志一千人は、明治三十三年一月、普選請願書を初めて衆議院に提出した。また、明治三十五年二月、衆議院に初めて普通選挙法案を上程したのは、降旗元太郎ら四人の議員であった。
普選運動は、挫折や弾圧にもめげず、松本から全国へ広がり、大きな民衆運動に発展していった。大正十三年、世論と政党を無視した藩閥特権内閣が成立するや、降旗元太郎らはこれを打倒して護憲三派による内閣を実現し、同十四年三月、男子のみではあるが、普通選挙法がわが国において初めて成立した。男女平等な選挙権の実現は、昭和二十年をまつこととなるが、普選運動は、苦難の途をへて、わが国政治史上に普及の栄誉をとどめたのである。
先人同志の普通選挙運動発祥の功績を永く後世に残すため、記念像の建立とともに、松本市中央図書館に「普選文庫」を設け関連資料を保存することにした。
平成七年 一月二十日
普選実現運動発祥之地
記念像建立委員会
さらに記念像の説明もありました。
普選実現運動発祥の地記念像
四本の石の柱は、木をイメージしました。具体的には、ゴッホの描く「糸杉」をモチーフにしています。炎のような、その躍動的な形態は、普選実現を目指し情熱的に活動された先人の思いを表わしています。
また、三本の黒く立ち上がる柱と、一本の白い柱という構成により新しく生まれた 普通選挙”という若い木と、それを守っていこうとする人々の思いも表現しています。また、黒い三本の柱は、夫々「納税資格全廃」「選挙人を20歳以上の男子」「被選挙人を30歳以上の男子」という三大目標を表し、やがて「婦人参政権」につながることを白柱で表現しました。さらに、この運動の中心的人物であった中村太八郎、降旗元太郎、木下尚江を三本の黒柱でその他の同志を白柱で表現したものであります。
彫刻は工芸作家伊藤博敏氏によるものです。
人権や言論の歴史を保存し市民の財産とする図書館という施設の正面玄関に相応しい、記念像だと感じました。