指揮者シャルル・デュトワ氏に聞く 2021OMFオーケストラコンサートBプログラム
デュトワさん、8月27日(金)に松本入り
28日(土)~30日(月)まで3日間の隔離生活後、31日(火)からリハーサルが始まりました。
Q.旧知の仲である小澤征爾さんが長年率いてきたSKOを指揮するにあたってどのような思いを持っていますか。また、リハーサルの感触はどうでしたか。
A.まずは皆さんこんばんは。今日はありがとうございます。今回の参加には個人的な思いが強くあります。私は1959年から小澤征爾さんのことを知っています。最初の出会いはタングルウッドで開催された音楽祭で、実際にはお会いしていないものの一緒に参加していたので彼の存在は知っていました。その後、私は1980年に小澤征爾さんがミュージックディレクターを務めていたボストン交響楽団のオーケストラでデビューをしました。(小澤征爾さんとは)非常によい関係を築いていたので、そこでデビューをすることは私にとってプレッシャーが大きなものでした。それから10年間、毎年小澤征爾さんにタングルウッド音楽祭に呼んでいただき、夏には一緒にお会いする機会がありました。そこでたくさんのリハーサルを聞かせていただき、彼は素晴らしい同僚であり、人としても素晴らしいと思いました。私のことをいつも呼んでくださることにも感謝をしています。もちろん、今回この音楽祭に参加させていただくことにも彼に対して感謝の気持ちがありますし、単純に嬉しいという気持ちもあります。SKF(OMF)では今回初めて指揮をするのですが、昔からよく話は聞いていました。SKOそして水戸室内管弦楽団の話をよく聞いています。そもそも私は日本が大好きで、日本人の演奏家と演奏することをいつも非常に楽しんでいます。今回はこのような機会をもらい、小澤征爾さんへの尊敬の意を表すという意味も込めて参加をさせていただきました。たくさんのキャンセルがある中ではありますが、コンサートができることを嬉しく思っています。
Q.今日のリハーサルはそれ自体が作品のようで素晴らしかったです。オーケストラがデュトワさんの指揮に吸い付くようで、ものすごく綿密に指導されているのがよくわかりました。オーケストラの反応をどう感じたか、(オーケストラの)評価も含めてお聞かせください。
A.今回のプログラムは、私が提案したいくつかの中から小澤征爾さんが選んだものです。このプログラムは小澤征爾さんへのオマージュの意味があり、特に彼がよく取り上げていることで知られているフランス作品を演奏します。小澤征爾さんはボストン交響楽団でフランス作品をたくさん演奏し、(私も)ベルリオーズやラヴェルなどの曲をたくさん聞いてきました。これらは非常に色彩豊かな作品なのですが、これを演奏するにあたって日本のオーケストラはとてもフレキシブルだと考えています。日本は割合ドイツのスタイルが伝統的に確立していて、ベートーヴェンやブラームスの作品を多く演奏しているのですが、ドビュッシーやラヴェル(のようなフランス)の作品は非常に特徴的で「どんな楽団でも演奏できる」というわけではありません。音色に特色があり、そういった点で(演奏に)とても努力を要するのです。SKOに関して私が一番驚いたのは、私が一つ何かを要求すると、それがすぐに直るということです。今回このオーケストラと演奏できることを非常に喜んでおります。
Q.デュトワさんは(8月)31日から松本でリハーサルに臨んでいますが、その間小澤征爾さんとお会いしたりやりとりをしたことはありましたか。また、どのようなシチュエーションの中で(やりとりが)あったのかお聞かせください。
A.願わくば明日会えたらいいなと思います。
Q.明日は無観客の収録となりますが、いつもと違う感覚でいるのかどうか、また収録への意気込みをお聞かせください。
A.この2年、ほとんどのコンサートがキャンセルとなり、厳しい時代を皆過ごしてきました。私もこの数年は無観客だったり少人数のコンサートをたくさん行ってきました。唯一の例外はロシア(のコンサート)です。私はサンクトペテルブルクでも指揮をしているのですが、そこでは「春の祭典」のような100人規模の演奏でも観客満員で演奏してきました。他の演奏会では無観客であったり少人数でしたが、とても悲しいことではあるものの、一方でいいコンサート・いい演奏をしたいという気持ちに全く変わりはありません。明日は会場にお客さんはいないけれど、素晴らしい演奏ができると思っています。
(最後に付け足して…)無観客でやる方が全く演奏しないよりもとてもいいことだと思っています。なので演奏できることが本当に嬉しいです。
Q.デュトワさんの作る音楽を楽しみに待っている観客がたくさんいると思います。観客の方へのメッセージをいただきいと同時に、(コロナ禍で)なかなかお出かけはできないと思いますが、松本の印象に残っている場所を教えていただきたいです。
A.今回この配信を見てくださったり、PCであったりラジオであったり様々な形で聞いていただくすべての皆さんに感謝を伝えたいと思っております。この素晴らしいオーケストラを聴いていただけることを嬉しく思いますし小澤征爾さんにも感謝をしております。
残念ながら今回はずっとホテルかホールのステージ上にしかいないので、なかなか松本市の印象を申し上げるのは難しいのですが、できれば帰る前に少し観光ができたらいいなと思っています。今回お城(松本城)を車の中から拝見したのですが、非常に町の雰囲気と合わせて感じの良い場所だなと感じました。私はもちろん日本のことはよく知っていて大好きなのですが、松本は大都市ではないものの非常に美しく綺麗な町だと思いました。願わくばまた来る機会があればと思いますし、その時こそは妻と一緒に町の中を歩き回ってみたいと思っています。
Q.配信という形を取ることで、演奏をここに来た方だけでなく全世界の方々にみてもらえることになると思います。デュトワさんは明日をどんな1日にしたいと思っていますか。
A.配信のコンサートは非常に素晴らしいと思っていて、観賞会やコンサートはもちろん(良いのですが)配信をすることで今は来ることができないお客様だったり、より多くの方が演奏を聞くことができます。特に現代社会の人々は非常に多くのものを見たがる特徴があるらしいので、映像を配信することによって普段は見れない細かいところを見ていただいたり、色々な部分を楽しんでいただけます。映像で配信していただけることに私自信も感謝を申し上げたいと思います。