ギター工場見学~フジゲン株式会社

2009.9.23
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アルプちゃんのバイオリンはギターに間違われることがあります。どうやらそれには訳があるようなのです。
長野県の中信地区(長野県を南北に分割した真ん中の地区)には、ギターに関わる工場がたくさんあります。1983年には松本のエレキギターの生産量は世界一だったのです。ギター好きな人には、「ギターの街」として松本が知られているので、アルプちゃんが持っている楽器をギターだと思ったのかもしれません。
そこで、アルプちゃんと一緒にギター工場を見学させていただきました。今回訪問したのは、フジゲン大町工場です。「どうして松本じゃないの?」と思う人もいるかもしれませんね。フジゲンは今ではエレキギターを松本では作っていませんが、松本の楽器製造・エレキギターの歴史を語る上でフジゲンを外すことはできないからです。
さて、フジゲンのエレキギターの魅力を見てみましょう。

◆大町工場
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6月下旬、アルプちゃんとともに、フジゲン(株)大町工場に伺いました。周りは田園地帯となっていて、大自然に囲まれた環境です。
ウィンドウの中には、フジゲンで作られた楽器の数々が展示されていました。ギターは勿論、マンドリンやバンジョー、さらにギターシンセなるものも!
こちらの大町工場では、木材の乾燥、張り合わせ、ボディ・ネックの加工、組立てなどを行っています。元々、組立ては松本市平田にある本社工場で行っていましたが、2008年5月より大町工場に移ってきました。塗装は塩尻市広丘や北海道にある工場で行っています。
フジゲンで生産しているギターの90%はOEM(他社ブランド製品の製造)で、世界的に有名なブランドの数々も手がけていたりします。お手持ちのギターも実はフジゲン製かもしれませんね。
生産量は1日120~130本だそうです。かつては1日500本程度作っていたこともありましたが、現在は低価格帯のギターは中国や韓国で作られることが多くなっており、フジゲンでは高価格帯のギターを主に作っています。

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事前説明を聞いた後、いよいよ工場見学のスタートです。アルプちゃんもワクワクしてる様子!
 
 
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まず目に入ってきたのは、納品された材木たち。木目がとってもキレイです。
 
 
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その木材をここ大町の気候になじませるため、自然乾燥も行った後、強制乾燥炉で約1ヶ月間の強制乾燥を行い、含水率を7~8%まで下げています。ボイラーの燃料には、工程で発生した木片や切屑を活用しています。
次に工場内に入っていきます。
 
 
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最初に目に入ってきたのは、積み上げられた木材たちです。ここでは木材の張り合わせを行っています。木材を規定の寸法に切り出し、目合わせをしてから接着剤で張り合わせています。
 
 
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ここに示したのは、『タイムレスティンバー』という木材です。アメリカの五大湖に70年以上沈んでいたのを引き上げたものです。現在使われている木材の多くは、植林されて、人工的に短期で育てられたものが多いのですが、このタイムレスティンバーは自然の中でじっくり育った原生林のため、非常に目が詰まっている希少材とのことです。ずっと湖底に沈んでいたためか、ちょっと臭みがあったりします。
 
 
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この工程では、ネックを削り出しています。真っ直ぐの細長い一枚の板を、型に沿って手作業で削っていきます。これはエレキベースのネックのようですね。
 
 
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ここでは、ネックの側面に薄くて黒い板を貼り付けています。着色したバスウッド(シナノキ)で、これによって右の図のようにボディに黒い線が入ります。塗装ではなく、こんな作業を行っていたとは・・・!
 
 
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この機械はNCルーターと言って、回転する刃をコンピュータ制御によって前後左右上下に動かすことで、木材を三次元に加工することができます。今でこそ、この機械は多くのギターメーカーに導入されていますが、最初に導入したのはフジゲンなんだそうです。見る見るうちに、形になっていきます。
 
 
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ボディを一度に削り出すのではなく、ある程度削ったところで角を丸めて、それから全体を削り出すんですね。
 
 
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この工程ではネックを削っています。奥に切屑が溜まっていますが、これがボイラーに送られて燃料になるのです。
 
 
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こちらでは、加工されたボディの研磨(サンダー)工程です。回転しているベルト状のヤスリを木材に手で押し当て、磨いていきます。熟練の技が必要となる作業です。
こうして加工されたボディ、ネックを塗装工場に送り、塗装を行います。

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塗装上がりのネックが並んでいます。(左)
そして、それぞれ塗装されたボディとネックが組みつけられました。(右)
 
 
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こちらの工程では、最終的な組立てとチェックを行っています。沢山のブースに分かれていて、電気パーツや糸巻き、弦などなど、細かな部品を組み付けていきます。アンプに繋いでサウンドチェックを行っているブースもありました。
 
 
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ここで組立て、チェックされたギターたちが、梱包されて全国・世界へ旅立って行きます。ずらっと並んだギターたち。この絵は圧巻でした。何本くらいあるんでしょう・・・?
  
工場見学後、案内していただいた方にお話を伺いました。工場には沢山の機械がありましたが、どんな機械を導入しているか、より『いかに機械の性能を引き出すかが大事』という言葉が印象的でした。
また、自社ギターへの想い、こだわり、誇りなどを熱く語っていただきました。このように、一人一人が誇りを持って働いているからこそ、量産製品とはいえ、一本一本が丁寧に想いを込めて作られていて、その結果、世界中で愛される製品を提供できているんだな、と感じました。

私自身、ギターを演奏するのですが、ここで作られたギターなら間違いないな、と思い、購買意欲をそそられてしまいました。というか、後日一本購入してしまいました・・・。
製造現場を見ることに加え、想いや本質に触れることができ、とても豊かな体験でした。

フジゲン株式会社 MI事業部
 長野県大町市常盤3680-1 
 TEL 0261-23-4708
 ホームページ → こちら

◆本社
studio.jpg松本市平田にあるフジゲン本社には、音響品質のチェックをする“スタジオJAMM”があります。一般の人でも練習スタジオとして借りることができます。
スタジオ全体が防音効果の高い設計になっていますが、演奏する部屋には床・壁・天井にオークのムク材が使われています。
そのため程よい響きが残り、気持ちよく演奏できます。
リハーサルなどに使う人が多いそうです。楽器の持ち込みはOKです。

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アルプちゃんも演奏してみました。
ノリノリでしたよ。

 スタジオJAMM
 営業時間:午後6時~午後10時
 レンタル料金:1時間につき2,000円
 場所:松本市平田東3-3-1 地図
 ご予約先:0263-58-2448  
 

フジゲンはエレキギターで磨かれた技術を活かしてウクレレ「ププケア」、和太鼓「龍昇太鼓」、オルゴール「ハートフィールド」も作っています。本社ではウクレレ・和太鼓の講習会も行なわれています。

uklele.jpgウクレレの講習会は今年の4月から始まりました初心者向けの講習会、そして7月から始まりました初心者・経験者対象の講習会においては、20代の娘さんと50代のお母さん、70代のご夫婦など、20代から70代までの方が学んでいます。現在では40人程の方が楽しまれています。
各コースの期間は半年ですが、その後も継続して習うことができます。ウクレレを作っている職人さんも一緒に習っています。作っている人・使っている人がわかる関係はお互い意見交換の場にもなり、安心感とアフターフォローの早さにもなります。
お得情報を耳にしました。生徒さんは特別価格でウクレレが買えるそうです。


♪ウクレレ講習会情報
 「ウクレレ講習会 in 松本 土曜日」 ※4月~開催中
 【期間】2009年4月11日~9月26日 ※10月以降も継続決定となりました
 【曜日】土曜日
 【時間】AM10:00~
 【月回数】2回、もしくは3回
 【会場】フジゲン株式会社 南工場2F多目的ホール
 【会費】月5,000円(税込)
 【備考】・ウクレレをお持ちの方は、ウクレレをご持参下さい。
 ・ウクレレをお持ちでない方には、ウクレレを貸し出し致します。
 ・ 会場内においては、入会後3ヶ月間は無料で貸し出します。
 ・ 会場外への貸し出しは可能です。1ヶ月間1000円(税込)で貸し出します。
 その他にも、「ウクレレ講習会 in 松本 月曜日」や「ウクレレ講習会 in 長野  月曜日」などが開催されています。詳細は、下記までお問い合わせください。

 フジゲン株式会社 ウクレレ講習会事務局 
 出井(いでい) 電話:0263-28-0393
 胡桃澤(くるみざわ) 電話:0263-24-3844

 
drum.jpg和太鼓は2003年から講習会が始まり、6ヶ月毎の初心者コースから始まり延べ130人の方が学ばれました。フジゲン社員の同好会もあるほど、何かやみつきになるものがあるようです。太鼓の木の部分は、ギター製造の技術から得た天然木の集成材からできています。廃棄部分が少なく、環境に優しい作り方です。普通の太鼓に比べて軽いので運ぶときには体にも優しいですね。

 
music_box.jpg写真のオルゴールはタモ材で箱が作られています。写真ではなかなか美しさを表せませんが、見たときには「わ~きれい」と感嘆しました。木の扱いを知っているフジゲンの技術は見た瞬間にうならせます。
ちなみにウクレレ、和太鼓、オルゴールですが直販していますとの事です。
お問合せ先:
フジゲン株式会社 胡桃澤(くるみざわ) 電話:0263-24-3844
 

 
木に対する思いは作られた製品からにじみ出てきますが、工場を見学させてもらうと、もっと感激します。それは、社員の方々が作業中にも関わらず、「こんにちは」と会釈してくれるのです。その姿に非常に感動しました。

【市民記者:小林、宮嶋】