辻邦生展

2025.9.29
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辻邦生展

あがたの森旧制高校記念館1階ギャラリーで辻邦生の展示会が開かれています。

今回は生誕100年の記念ということで、各地のゆかりのある場所で巡回開催されます。

松本は2025年9月23日から11月30日までです。

 

すでに山梨県立文学館と軽井沢高原文庫での展示は終了し、松本に続いて笛吹市春日居郷土館・小川正子記念館、清須市はるひ美術館、学習院大学史料館、神奈川近代文学館で開催されます。

 

 

連作短編集「ある生涯の七つの場所」の中に、松本を舞台にしたものがあります。主人公は旧制松本高校の学生で、東京を離れる場面から始まります。そしてあがたの森にあった高等学校、火の見櫓のあった縄手通り、信大の場所にあった陸軍歩兵第五十連隊、入山辺と思しき場所にある丸太小屋、など戦前の松本の様子が物語の進行に絡めて描き出されています。虚実入り混じった名詞が出てくるので、あれはあの店かも知れない、これはあの場所に違いないと想像をふくらませて読むのも楽しいものです。


以下、私事で恐縮ですが、

入社した企業の上司が筆者の本棚を見て、「福永武彦が好きなら辻邦生もいいよ。本格的だよ。」と勧めてくれたり、同僚が部長になった時、エッセイ集「パリの時」の文章から引用した言葉を部門の方針として掲げたり、「夏の砦」では、モデルとなった湖の別荘地が筆者の郷里であったことや、パリのクリュニー中世美術館で見たユニコーンのタペストリーなど実感できる描写が多くあったり、様々な国籍の若者のひと夏の友情と失望を描いた「洪水の終り」には青春のほろ苦さを覚えたりと、辻邦生が紡ぎ出す言葉、考え方、物語の舞台は、どれもが確かな教養と豊富な体験に裏打ちされ、こころの芯に響くものでした。


実際に出版された書籍。全仕事のほんの一部です。

 

 

 

 


会場では「辻邦生の101冊」と題したカラーの印刷物も入手できます。

 

 

 

 

 


自筆。小さい字でぎっしり書かれています。カワイイ文字。

 

 


 

多方面にわたる相関図。

 

 

 

 


生誕100年を記念してメモリアルブック「辻邦生 雲の上の永遠の太陽」1500円+税(写真右端)が出版されています。

 

 

 

 

 


旧制高校の時代より成長した(であろう)ヒマラヤ杉の並木。

周辺に3つある高校の生徒たちも公園内のこの道をよく利用しています。