横尾本谷右俣~南岳。

所要時間:全工程で10時間程。  レベル:
山行日: 2019.09.19
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標高:南岳 3032m
横尾本谷右俣~南岳。

穂高連峰の中心地である涸沢へと横尾から上がっていく途中にある本谷橋の手前から、川沿いに登って行くヴァリエーションルートになっている「横尾本谷右俣」と言う沢があります。 この「横尾本谷右俣」という細いスジのような沢は、通常登山道ではないのですがルートとなっていて、横尾尾根に乗っ越すコルへと登れるようになっているのです!!・・・。 この「横尾本谷右俣」のヴァリエーションルートは、5月はまだスキー出来たり、6月~7月にはまだ残雪が多く残るのでアイゼンやピッケルが必要な残雪ルート、そして9月になるとほぼ雪が無くなって沢登り系のルートとなります。今回僕は、軽装のワンデイ登山で、9月に行ってみたのでした。

 

上高地~横尾までのルートは、「槍ヶ岳」の記事をご覧下さい。→「槍ヶ岳・槍沢コース

 

「横尾~本谷橋」(1時間程)

横尾大橋を渡って、一路「涸沢」方面へと進んで行きます。最初は、左手に大きな「屏風岩」を見ながら川沿いを歩いていき、後半は少し登りになっていきます・・・。

そして、ちょっとシンドくなってきた頃に、本谷橋という吊り橋に到着します。通常、「涸沢」へと上がるルートはこの吊り橋を渡った先の登山道を登って行くのですが、今回の「横尾本谷右俣」ルートはこの本谷橋を渡らずに川沿いを遡行していくのです。

 

 

「本谷橋~横尾尾根」(約3時間程)

本谷橋からは登山道を歩かずに、そのまま川原の石や岩の上を遡上して行きます・・・。目の前には北穂高岳が巨大で荘厳な雰囲気を纏って聳えて見えてきます!  この画像の奥に、四角い巨大な岩がありますが、その向こうで川が二股に分かれていて、左が涸沢、そして右側が今回のターゲットである横尾本谷のルート(沢)となるのです・・・。

 

二股から右へと分かれたポイントです。これが「横尾本谷右俣」です! この辺りはまだ川原が広くなっていますが、登山道も道標も何も無いので、自分が歩きやすいと思う岩の上を飛び移りながら、ひたすら川の上側を目指して進んで行くのです・・・。

 

少し行くとまた、川の真ん中に巨大な四角い「テーブル岩」と呼べそうなぐらいの巨岩がありました。高さは約7~8mぐらいはあるでしょうか? どちら側でも通れますが、僕はこの画像の左側から抜けて登って行きました。

 

テーブル岩を越えていくと、川原が急に狭くなって文字通り「沢」となってきます。いよいよ、ここからがヴァリエーションルートの本番になります!・・・。

 

急に細くなってきた右俣沢を、何度も右に左に渡渉しながらドンドン上へと登っていきます。滝や川にハマらないように避けながら登って行きました。ゴロゴロとした浮石にも注意が必要です。
 
「横尾本谷右俣」ルートは、上部に一ヶ所だけ沢登りしないと抜けられない滝が出てきます。塗れてもイイという人はこの滝も登って行くのだと思いますが、水に塗れるのが苦手な人はこの滝を右側から迂回して登っていくことになります。僕は沢登りのスタイルではなかったので右側から巻いて登りました。

 

滝の右側の迂回路にはフィックスロープが残置してありました。みんな、ここは右側へ迂回して登っていくのですね・・・。でも、この画像の残置ロープはとても古いロープなので、もし切れたらとても危険なので、なるべく使わないようにするのが良いと思います。僕はこのロープは使わずに左側のクラックを使って越えて行きました・・・。

 

上記の滝を越えて登って行くと、沢の上にスカイラインが見えました! あそこがこの「横尾本谷右俣」の沢の終了点となります。この辺りは岩がゴロゴロ浮いていて急なので、石や岩を落とさないように慎重に一歩ずつ登っていきました・・・。

 

そして、最後の滝を乗っ越すと・・・・、ドッカァーーーン!と、広大で美しい横尾のカールが、目の前に広がったのでした! この一気に目の前がカール地形が広がる瞬間は、ちょっと感動すると思います!

 

右俣沢を横尾カールに上りきった後、一ヶ所だけハイマツ帯があるのですが、沢に沿って左側に行くとハイマツの中に沢が枯れた岩の道がありハイマツのトンネルになっている所があります。なるべく草木などを踏み荒らさないように岩の上だけを歩いて、そこを抜けて行きました・・・・。

 

ハイマツ帯を抜けると、このルートのハイライトな場所である広大なカールが広がります! 素晴しく雄大な景色です! 左側のカーテン状の山が南岳で、右側のギザギザの稜線が横尾尾根です。

 

後ろを振り返ると、「屏風岩の頭」が沢の真ん中に見えます。「屏風岩」は、ここから見ると双耳峰のように見えます。

 

左側には、「南岳、東壁」が聳えています。素晴しい景色です!! この横尾カールは、7月頃は高山植物の花が咲き乱れ、秋はナナカマドの紅葉もとてもキレイらしいです・・・。

 

横尾カールを横断して行き、いよいよこの横尾本谷右俣コースのラスト・セクションである横尾尾根への登りをこなしていきます。 ここも、植生を踏み荒らさないように石がゴロゴロしている枯れた沢の部分だけを登っていくのです。 石や岩は踏み慣らしてないために浮石が多くて足を乗せるとグラグラと動くので、捻挫したり滑落したりしないように細心の注意をしながら登っていきました。

 

そして、横尾尾根の稜線に上って通常の登山道に合流したら、この「横尾本谷右俣」のヴァリエーションルートの部分は終了です! ここからは通常の登山道となります。 横尾尾根の向こう側には、「常念岳」がきれいに聳えていました!

 
そして、横尾尾根に上ったら、その向こう側には「槍ヶ岳」がドォーーン!と、目の前に、圧倒的で威圧的なぐらいで見えてきたのでした!

 

 

「横尾尾根のコル~南岳」(約1時間程)

ここからは、天狗原や氷河公園から来る通常の登山道となります。 でも通常の登山道とは言っても、この岩峰を登って行くので、とても厳しいコースです。途中の岩場ではハシゴや鎖もありますので、十分注意しながら登っていきました。

 

そして、槍ヶ岳~南岳の稜線に出ました! このコースの北側にはいつも槍ヶ岳が見えていて、とてもキレイです!

 

南側を見ると、丸い南岳が目の前に見えるのです。ここまで来ると、南岳の山頂まであともう少しです。

 

そして、南岳の山頂に到着しました!! この日の槍ヶ岳の眺望は、雲一つ無い快晴で、最高にキレイでした!! 僕個人的には、南岳周辺はいつ来ても他の登山者が少なくて、静かなので好きですね・・・。景色を眺めながら山頂でゆっくりしたい気分になるのです。

 

南岳山頂を越えて南側へ5分ほど行くと、南岳小屋があります。稜線の素晴しい山小屋です。僕はここでお昼ご飯を頂き、大休止をしました。 北側には槍ヶ岳、南側には大キレットから北穂高岳、常念岳なども見えていて、いつまで眺めていても飽きない、最高に美しい山岳景色です。

 

 

「帰り。南岳小屋→上高地」(4時間程)

お昼ご飯を頂いてゆっくりと休んだ後、今回の僕はワンデイ登山だったので、また上高地へと帰っていったのでした・・・。 僕は、帰りのルートは、大キレットから~「横尾本谷左俣」のヴァリエーションルートを下って帰ったのですが、落石が頻発するガレガレの沢の岩の上だけを通って帰るルートだったので、かなり緊張したのと、足腰がとっても疲れました!・・・。
通常だと、また横尾尾根を下って→天狗原→槍沢→横尾と通って帰るのが一番良いと思います。
 
 

【注意と総評】

今回の「「横尾本谷右俣」のヴァリエーションルートは、前半は沢登り的なルート、後半は横尾カールの真ん中を通ってとても素晴しい景色を見る事が出来る、好ルートでした。しかし、このルートは地図にも載っていない、沢を遡行するヴァリエーションルートのため、沢登りやクイミングの出来る技術と経験、そして初心者はロープやハーネスなどのクライミング用ギアが必要なルートだと思います。今回僕は軽量装備の日帰りで行きましたが、通常だと横尾山荘で1泊してそこからスタートして南岳小屋までが2日目、そして3日目に下山という2泊3日が良いと思います。 もしこのルートに行ってみたいと思われる方は、必ずクライミングが出来る登山ガイドさんと一緒に行って下さい。くれぐれもよろしくお願いします!

 

【2019年9月19日 登山者:ハタゴニアン】