涸沢《紅葉》
涸沢は、穂高連峰の手前にあるカール(氷河期にできた渓谷)です。上高地などから槍・穂高に登ったり下山した時の中継地点として、日本有数の登山基地になっています。山小屋も涸沢ヒュッテと涸沢小屋の2軒がある他、シーズンにはカラフルなテントが立ち並びます。
また、全国に名だたる山岳紅葉の名所で、10月初旬〜中旬の紅葉シーズンは、登山道も山小屋も非常に混雑します(紅葉情報をご参照ください)。
上高地からのコースは、明神・徳沢・横尾経由の通常のコースと、下りのルートとして紹介する上中級者向けのパノラマコースがありますが、いずれも、登りでは片道5時間半〜6時間半かかります。
上高地バスターミナル〜明神橋〜徳沢〜横尾〜本谷橋(4時間)
横尾までは、槍ヶ岳 槍沢コースの最初と同じです。横尾まで3時間弱かかります。
写真のように、横尾大橋を渡る所で、槍ヶ岳コースとは分かれます。横尾大橋は、美しい木の橋ですが、少々揺れます。渡って少し行くと、それまで平坦な道だったのが、急に登りになり、やっと登山気分が味わえます。
立ち枯れした木がところどころで目立つ林間コースを少し行くと、巨大な岩「屏風岩」が左手に見えて来ます。標高差が何と1,000mの絶壁で、ロッククライミングの名所で、ゴマ粒のように岩を登っている人が見られる時もあります。歩を進めると、本谷橋にたどり着きます。
本谷橋〜涸沢(2時間)
本谷橋は、横尾橋よりさらに揺れてスリルがあります。ここも紅葉の名所です。橋を渡った所の広い川原の岩の上で、たくさんの方々が休憩していました。
本谷橋からは、距離はそれほど長くありませんが、勾配が急になります。途中のガレ場(枯れた沢の岩場)で休憩しながらがんばって登ります。右側の山の斜面は美しい林で、秋は、ナナカマドの紅葉やダケカンバの黄葉が見事です。手前に、ナナカマドの真っ赤な実が美しく成っていました。
上高地から歩くこと6時間。穂高連峰と涸沢カールが眼前に見えて来ました!右側が涸沢小屋、左が涸沢ヒュッテで、その間にテント場があります。この日は、紅葉シーズンの3連休の初日で、2つの小屋で計300人がすし詰め状態で泊まったそうです。
カールには例年8〜9月まで残雪が残りますが、今年は春先に雪が多かったため、10月まで残っていました。このまま万年雪となるのでしょう。
涸沢からは、正面少し左に奥穂高岳がそびえ立ち、その左に、前穂高岳、右に、涸沢岳、北穂高岳と、穂高連峰の主峰が一望できます。ここまで頑張って登った者だけが見られる大自然のパノラマです。
2つの山小屋は、周囲の景観に見事に溶け込んだ建築で、それも絵になります。涸沢岳には、槍ヶ岳のようにとんがった「涸沢槍」があり、一際目立ちます。視界が良ければ、奥穂高岳と涸沢岳の間に、小さな穂高岳山荘を見ることもできますよ。
【下り:パノラマコース】涸沢〜屏風のコル〜上高地バスターミナル(5時間)
涸沢ヒュッテの前には眺望の良いテーブル席があり、1杯800円のビールを飲みながら首を360度展開させて穂高の絶景を楽しめます。
下山は、元の道をたどることもできますが、
- 登山中級者以上で、
- 雪渓が消えている7月下旬以降で、
- 悪天候でない
なら、パノラマコース(パノラマ新道)がお薦めです。涸沢ヒュッテから下ってすぐの所を右にたどれば行けます。
ここから1時間弱の行程は、断崖で道幅が狭く、転落の危険があります。ロープが張ってあるので利用し、細心の注意を払って歩きます。
断崖が終わると、「屏風のコル」と呼ばれる場所になります。「コル」は山と山の間にあるくぼみのことで、ここからは、写真のように槍ヶ岳がきれいに見えます。しばらく行くと分岐しますが、まっすぐ行くと「屏風の頭」です。「頭」のてっぺんまでは50分ほどかかりますが、10分ほど行くだけでも穂高連峰のすばらしい眺望が見られます。
引き返して分岐を左にたどります。ここからはジグザグの急な下りです。夏はお花畑となる斜面を下り、枯れた川の岩場を何度か越えます。
左側を望むと、美しい斜面の向こうに、蝶ヶ岳と蝶ヶ岳ヒュッテが見えました。最後に、水の流れている沢を渡り、奥又白池に行く分岐を過ぎて沢の中を下ります。林の中に、井上靖の小説『氷壁』のモデルのナイロンザイル事件の碑があり、さらに下ると、林道に出ます。右に行くと明神池でそのまま右岸を行くか、いったん左に行って新村橋を渡ってまた徳沢を通り、また長い歩道歩きを終えると上高地に到着です!
<温泉>
上高地清水屋ホテル(外来入浴の受付は13時半まで)と上高地温泉ホテル(15時半まで)でかけ流しの温泉に入れます!
詳しくは上高地 Official Website をご覧ください。
登山者の感想
上高地から往復11時間の行程。松本から涸沢に日帰りで行く人はまれで、「え〜?日帰りで?」と言われました。ピーク時のみ出る朝4時台の松本電鉄で松本駅を出て、夕刻最終6時上高地発のバスに間に合うようにガンガン登って下りました。次回はやはり泊まってゆっくり楽しみ、眼前に見えた穂高(涸沢から3時間ほどで登れる)を目指したいです。
この日は、最高の山日和で、神々しいばかりの穂高の山々と紅葉がまぶたに焼きついています。
山に登ると、人は大自然の中の小さな存在だと感じる一方で、こんな場所まで足で歩いて来て、素晴らしい光景に出会える。健康であることに感謝すると共に、大きなスケールで物事を見られるようになり、日々の仕事にも頑張れます。皆さんもぜひ!
【登山者・記事 常念あきら】
アクセス方法:槍ヶ岳 槍沢コースのページのアクセス方法の説明をご覧ください。