霞沢岳と徳本峠

レベル:
山行日: 2010.10.04
47
標高:2645.6m
霞沢岳と徳本峠

今回は、北アルプス 霞沢岳と徳本峠 を紹介します。

霞沢岳(かすみざわだけ)は松本市上高地の南にある山。日本200名山の一つ。穂高連峰の眺めが素晴らしいと評判の山。
徳本峠(とくごうとうげ)は松本市島々宿(しましまじゅく)と上高地を結んでいます。標高約2140m。峠道は江戸時代までは樹木の伐採や炭焼きの生活資源のための道でした。明治時代になると上高地で放牧する牛や馬などもこの道を通りました。明治26年にはW.ウェストンが峠を越えて前穂高岳に登り、上高地が多くの人に知られるようになりました。昭和8年に上高地へのバス路線が開通されるまでは登山者はこの道を利用しました。

今回ご紹介するルートは上高地→徳本峠→霞沢岳→徳本峠→島々宿の手前の島々谷林道ゲートまでのルートです。
1日目の行程は青線、2日目は赤線、3日目は緑線。

やまたみ登山学校OB会やまたみ倶楽部での2泊3日の山行です。記載の時間には小休憩も含まれています。かなりゆっくりのペースです。仲間の一人がみんなを喜ばせたかったらしくお赤飯を持って来てくれました。1日目の10時過ぎに頂いたのですがまだ温かくておいしかったです。

松本からのアクセス方法

<マイカーの場合> 松本市から、R158で上高地へ向かいます。マイカー規制があるため沢渡(さわんど)で駐車(1日500円)してシャトルバス(片道1,000円 往復1,800円)に乗り換え。タクシーも利用可。松本から(1時間)→沢渡(バス30分)→上高地

<公共交通の場合>
上高地バスターミナル松本駅から(松本電鉄 電車30分)→新島々駅(バス65分)→上高地
松本バスターミナルから(バス100分)→上高地

上高地バスターミナル~徳本峠小屋 3時間

1日目

上高地バスターミナルから明神までは約1時間
明神から徳本峠小屋までは約2時間
明神から5分ほどで徳沢との分岐「白沢出会」(標高1545m)に着きます。そこで右に曲がります。しばらくは広くほとんど平らな道です。道が細くなると坂道になります。徐々に傾斜はきつくなりますが、険しい道ではありません。良く整備されています。
「最終水場」の前後で明神岳・穂高連峰を眺めることが出来ます。時々振り返ってみてください。

霞沢岳との分岐には「徳本峠0.2Km」と書かれています。ここから5分で峠に着きます。
徳本峠小屋の前には多くの人がいました。それほど人がいるとは思っていなかったので驚きました。上高地バスターミナルから3時間ほど歩けば穂高連峰の素晴らしい眺めを堪能できるので人気の場所なのでしょう。

12時ごろに徳本峠に着き、体力的にも余裕があったので「明神見晴し」まで行きました。
そこに着くまでは樹林帯で展望がないため突然見える前穂高岳に感激しました。ちょこんとかわいらしく槍ヶ岳も見えました。
所要時間は往復で2時間程度ですが、私達はゆっくりしていたため休憩を含めて3時間かかりました。


徳本峠小屋~霞沢岳 往復

2日目

徳本峠小屋からスタジオジャンクションまで 40分
小屋にお願いして早めに朝食を済まさせてもらい身支度を整えます。5時30分頃には美しい朝焼け。
5時50分出発。小屋から45秒で着く展望台から穂高連峰が眺められるのですが雲がかかっていました。展望台から5分ほど歩くと急坂が始まります。
スタジオジャンクションからジャンクションピークまで 25分
急坂の途中にあるスタジオジャンクション。穂高連峰が眺められるようなのですが、雲がかかっていました。
ジャンクションピークから小湿地まで 40分
6時55分、標高2428mのジャンクションピーク着。ここでは南側の展望が開けています。条件が良ければ富士山が見えるようです。この日は見えませんでした。北側の穂高連峰は木に隠れて見えません。ここから先は徐々に標高が下がり始めます。道もぬかるんでいるのでストック2本を使用しました。
小湿地からK1の下まで 1時間20分
小湿地は標高2261m。ジャンクションピークから約160mも下がってしまいもったいないような気がします。
時々雲の間から陽が差し込み美しい紅葉の始まりに目を奪われます。
K1下までのアップダウンにまいってました。
登山道は良く整備されています。徳本峠小屋の方や仲間が草を刈ったりしています。霞沢の源頭(げんとう:沢の源流部。水流がとだえてから稜線にいたる地帯。)は侵食されているので登山道をずらすように草刈をしてくれたそうです。安全に登れるのにはこんな努力もあるのです。感謝!!

K1の下からK1まで 40分
K1の下標高約2410mの鞍部で霞沢岳まで登る人とここまでの人と別れました。グループの女性4人がここまでになったため、私以外は男性で霞沢岳を目指しました。ここから先は両手が空いていたほうが良いということなのでストックは道の脇に置きました。
K1までのこの区間が一番険しかったです。ロープや木の根につかまりながら登ります。一番危険なのは落石です。石がゴロゴロとしていて急坂なのでいつ落石が起きても不思議ではありません。降りてくるグループがいたので落石に遭わない場所を探してじっと通り過ぎるのを待ちました。

K1から霞沢岳まで 休憩を含めると50分
K1からK2まで 歩くだけなら15分くらい
K1までが本当にきつくて着いた時には大安堵でした。クタクタになってはいたのですが、「ヤッホ~~」「よろれいひ~」(ヨーデルは難しい)と叫ぶと下で別れた女性達が気がついて手を振ってくれていました。そんなことをしているうちに元気を取り戻せたような気がします。
前日霞沢岳に登った人の話では霞沢岳山頂よりもK1のほうが眺めが良かったと言っていました。しかしこの日は期待していた穂高連峰の眺めは見られませんでした。

南を向くと目の前にはK2が。そこに人が立っているのが見えます。意外に大きく見えてそんなに遠くはないと思いながらも、また下って登るのかと思うとちょっと気が遠くなります。
しかし、案ずるより生むが易しでK2には思っていたよりも簡単に着きました。おしゃべりしていたのであっという間でした。

K2から霞沢岳まで 歩くだけなら20分くらい
K2から見るとK1からK2よりも長い距離の霞沢岳に本当にたどり着けるのかな~と少し自信がなくなります。
昭文社の登山地図を見るとK1から霞沢岳のコースタイムは往路復路共に25分となっています。これは相当健脚の方の場合だと思います。ジャンクションピークからのアップダウウンとK1までの急坂で疲れきっているところにK1、K2、霞沢岳の三つのピークがあるのです。K1からは大きなアップダウンを見るたびに「え゛~」と叫んでいました。それぞれのピークまでの歩行時間は大したことはないかもしれませんが、休憩せずにいられませんでした。それでK1から霞沢岳は休憩も含めると50分かかったのです。

霞沢岳山頂
曇り空で景色はイマイチだったのですが、ここまで来られたことが本当にうれしく感じられました。もう二度と来ないかもしれないな~と思いながらおにぎりを食べて景色も一緒に飲み込むように味わいました。

霞沢岳からK1まで 40分
霞沢岳山頂でゆっくり休んで気力も体力も持ち直したせいか40分でK1まで来ることができました。
私達はちょっとラッキーだったように思います。それは霞沢岳からK2まで来たときには霞沢岳はすっかり霧に隠れてしまい見えなくなっていました。霞沢岳をしっかり見て登ることができ、山頂からは焼岳や上高地の梓川も眺められてラッキーだったな~と思いました。

K1からK1の下まで 30分
ストックを置いた場所まで戻って一安心。やはりあの急坂は下るのも慎重になり気を遣いました。

K1の下からジャンクションピークまで 2時間10分
雨が降り出したため合羽を着て歩き始めると雨がやんだり、合羽を脱いで歩き始めると雨が降り出したり。時にはみぞれのようなものが落ちてくるなど着たり脱いだりちょっと忙しい帰り道でした。そこでとっておきのテクニックを教えていただきました。合羽のズボンをはいたり脱いだりするとき靴が支えてスムーズに支度ができなくて焦ることはありませんか?そんな悩みを解決してくれる方法です。合羽のズボンをはく前に靴を履いたままさらにスーパー袋を履きます。それから合羽のズボンに足を通すとスルリ~ンとスムーズにはくことができます。ズボンを脱ぐときも先にスーパー袋を履いて足を抜くだけです。ズボンの内側もあまり汚さずに済みます。ちょっと穴の開いたスーパー袋でも靴が入れば使えます。とても快適なので是非試してみてください。

ジャンクションピークから徳本峠小屋まで 1時間
登りでは急坂でゆっくり登っていましたが下りはどんどん足が進みます。この長い下りが曲者でした。坂の終わり近くで脚が笑い始めてました。ワハハワハハ・・・ガクガクガクって感じです。ジャンクションピークまでのアップダウンでストックの突き方も両手交互ではなく両手同時の突き方ですごく疲れた感じになっていました。実際相当疲れていました。笑っている脚をカバーするストック使いになっていなかったように思います。それでも足はどんどん進むので精神的には大丈夫だと思っていました。ところが下り坂が終わって普段はなんでもないようなゆるやかな上り坂になったときに足が止まってしまいました。気持は「小屋まであと5分!やった~!」と思っているのに脚は「もう限界です~歩けない~(涙)」と全く反対の反応をしているようでした。水分補給をして一息入れたら歩けるようになりました。徳本峠小屋前で先に戻っていた仲間達が出迎えてくれたときには「あ~やっと戻って来れた~」、うれしいというよりは安堵感で泣きたくなりました。小屋の方においしいコーヒーをいれていただきゆっくりと飲んでいるうちに登ったうれしさがじわじわと感じられるようになったような気がします。コーヒーがとってもおいしくて3杯も飲んでました。

徳本峠小屋~島々

3日目

徳本峠小屋から水場「力水」まで40分
昨夜から雨が降り出し、みんなの関心事は天気でした。この山行の初日の天気予報でもこの日は雨になっていました。天気予報が外れますように!と思っていたのに正確な予報でした。
合羽を着て6時20分ごろ徳本峠小屋を出発。雨の中にもかかわらず小屋のスタッフの方がわざわざ見送ってくれました。
絵頂きました
登山道脇の笹や草が刈られしっかりと整備された登山道でした。草刈などは徳本峠小屋のスタッフや仲間が行なっているそうです。そのような努力によって快適に登ることができるのです。胸が熱くなる思いでした。
力水から岩魚留小屋まで 2時間
力水から20分ほど下った辺りから道の状況が険しくなります。沢を渡る橋などは良く出来ているとは思うのですが、雨に濡れると滑りやすく不安定でした。前後ではなく左右に傾いている木製の橋が滑り、転ぶ人もいて怖い思いをしました。時には通ってはいけない橋もあります。注意書きをよく読んでください。
岩魚留小屋から二俣口まで 2時間40分
岩魚留小屋は営業してないので軒下で雨宿り。
この区間もバラエティーに富んだ登山道です。次々に出てくる難所(雨で滑るかもしれない橋、はしご、斜面、落石注意の場所)に気が抜けませんでした。あたりの状況をよく確認しないといけないのに合羽を着ていると頭を動かして辺りを見るのが面倒になります。

二俣からゲートまで 45分
二俣(標高約930m)まで来ると後はほぼ平らで広い林道です。私達は車をゲートの脇の駐車場に止めてあったのでそこまで行きました。安曇支所近くのバス停までは二俣から1時間30分ほど歩きます。

感想

登山地図を見ていて霞沢岳も徳本峠も行ってみたいとずっと思っていたのですが、こんなに大変だとは思ってもいませんでした。正直なめていました。
K1、K2、霞沢岳の往復もコースタイムを見て余裕だと思っていました。
ジャンクションピークから先の起伏を地図上から把握できず、いくつものアップダウンで疲労していたのと歩く距離も長く、また樹林帯の景色が単調で気持が切り替わらないのも疲労になるように感じました。写真はひょうたん池への道中からの眺め。写真を良く見るとアップダウンの様子などをある程度知ることが出来ました。実施する前に良く見ておけば良かったとこの記事を書いていて思いました。

徳本峠から島々谷への道も峠道なので楽勝だと思っていたのですがとんでもありませんでした。2006年の豪雨で沢沿いがだいぶ荒れてしまったようです。かつて牛や馬が通っていたなんて考えられないほどです。それでも徳本峠小屋のスタッフや関係者の努力もあり通れるようになりました。整備をしてくれる人のおかげで登山が楽しめるのだとしみじみ感じる山行でした。
ウェストンは島々谷から徳本峠に登って大変感激したようです。島々谷から登って体験してみたいものです。
【2010年10月2日~4日実施 記者・登山者:アルプスちえみ】