御嶽山(継子岳と池めぐり)

レベル:
85
標高:2859m
御嶽山(継子岳と池めぐり)

御嶽山(おんたけさん)は、長野県木曽郡木曽町、同郡大滝村、岐阜県高山市と下呂市にまたがる台形の美しい姿の山です。広い山頂部には、最高峰の剣ヶ峰(けんがみね、標高3067m)の他に、摩利支天山(まりしてんやま、標高2959m)、継子岳(ままこだけ、標高2859m)、継母岳(ままははだけ、標高2867m)があります。日本百名山の一つ。池や滝も多く、山頂部には一ノ池から五ノ池までがあります。
今回紹介するコースでは、継子岳と摩利支天山、五ノ池、四ノ池、三ノ池、二ノ池を巡ります。

写真は、木曽町九蔵峠からの眺め。御嶽山展望ポイントで展望台もあります。

アクセス

松本から国道19号線を木曽まで行き、信号機「木曽大橋」で右折して、国道361号線を上り飛騨街道を通り、岐阜県道463号線を通って濁河(にごりご)温泉駐車場到着。道をぐんぐん上がって行き、行き止まりになった所に駐車場があります。松本からは2時間30分くらいかかります。(早朝の場合)
朝6時45分ごろ駐車場に到着。駐車場が広げられたおかげで車を停めることができました。

<1日目>

濁河温泉登山口~湯の花峠 60分(小休憩含む)

登山口にはバイオトイレがあります。女性2室、男性1室。室内は広めで臭いもなく、ウォームレットでした!快適なトイレです。トイレの左には登山届けのポストがあります。
濁河温泉は標高1800m、日本では最も高い場所にある温泉街です。朝7時浴衣姿の男性が良い味を出してました。
地図「山と高原地図 御嶽山 2011年版」には登山口近くに水場のマークが描かれていましたが水は涸れていました。コップなど置かれていたので最近涸れてしまったのでしょう。
登山口から間もなく木道です。道幅にカットされた横木が続きます。以前ロープウェイを使って飯森高原駅から登った時にも驚いたのですが、登山道が非常に良く整備されています。こちらの小坂口(おさかぐち)の方は木道がずっと続き、階段や石で敷き詰められていたりしてとても丁寧な整備だと思いました。
登山道から仙人滝が見られます。登山口の近くから仙人滝に行く遊歩道がありました。多分下から見上げられるのではないかと思います。
登山口から40分ほどで「ジョーズ岩」に着きます。山の中で巨大なジョーズに会うとは!行ったときのお楽しみで写真は載せないでおきますね。


湯の花峠~お助け水 75分(小休憩含む)

樹林帯は暗いと思うほど木が生い茂っています。湯の花峠でゆっくり休もうと思い腰を下ろすと蚊かブヨがたちまち集ってきました。日陰には刺す虫がいるのでちょっと水を飲んだだけですぐに歩き始めました。
湯の花峠から15分ほど歩くと「蛙岩」がありました。今までいろんな岩を見てきましたが、“ここまでやるか!”とちょっとビックリするような岩でした。あえて写真は載せないでおきます。お楽しみに~。
のぞき岩避難小屋は避難できそうにありませんでした。中に入るのもどんなものかと思うほど痛んでいるように見えました。
登山道は石が敷き詰められていたり、階段もあったり、誰でも登れるように配慮されていました。家族で来るといいですね。3世代で登られているご家族も見かけました。北アルプスに比べるとファッショナブルな山ガールや若いカップルの姿は圧倒的に少なかったです。今回の山行で御嶽山のイメージはファミリーと信者の山になったような気がします。


お助け水~飛騨頂上 70分(小休憩含む)

お助け水には、水がありません。
高木は少なくなり登山道は明るくなります。階段も木道もなくなり、よくある登山道になります。危険な所もなく安心して歩けます。油断は禁物ですが。
道の様子も変わった上に、標高が2500mを越えているため足の進み具合が遅くなります。森林限界で樹高が低いため景色を眺めることができます。歩く気力を取り戻しながら足を進めます。
「飛騨頂上まで600m」と書かれた札を見てからが特に長く感じました。そこから30分ちょっとで着いたのですが、長い600mでした。
飛騨頂上の手前にはコマクサが群生していました。どこで見てもコマクサは可愛く、元気がもらえます。

飛騨頂上・五ノ池~継子岳 30分

登山口駐車場に予定よりも1時間早く着いた上に、長い休憩をせずに登ったので10時30分にもならないで着いてしまいました。12時到着の予定でした。

五の池小屋に宿泊する予定でいたのですが、早く着いてしまったこととガスが巻いていて景色がほとんどわからなかったので宿泊をあきらめて日帰りにするかどうするか迷っていました。山小屋泊の楽しみの一つは夕焼けと朝焼けです。コーヒーを頂きながら小屋のスタッフの方に最近のお天気を尋ねました。近くにいた男性も加わり、昨日の夕焼けや今朝の朝焼けを撮影した写真を見せてくれました。今はガスっていても運が良ければ見られそうと思っていた私に、男性客が「運が良くなるようにしてください」と言ってくれました。また女性スタッフの方が「今日は満月です」と言ったのです。へ~満月の夜に山小屋に泊まるなんていいな~と思い、すぐに宿泊の手続きをしました。
食事は5時半からでまだ十分に時間があったので継子岳に行くことにしました。ガスが巻いてはいるものの全く視界が悪くて何も見えないわけではなかったので積極的に行きました。
あ~これが岩のトンネルか~、道はよく整備されていて迷わないな~、へ~石仏みたいに立てられた石がたくさんあって「針の山」って言うんだ~、ここが継子岳か~ほ~っと思いながら振り返るように南を向くと美しい光景が広がっていてしばらく呆然としてしまいました。

ガスが切れ始めて四ノ池が見えてきました。少し前までは何も見えなかったのに、こんなにすごい眺めがあったなんて!

継子岳~四ノ池 35分

継子岳から継子二峰に行く間にはコマクサがたくさん咲いていました。盛りは過ぎてしまったもののかわいらしい姿です。御嶽山のコマクサは、うっかり踏まれないように石で囲われている姿が目立ちました。とっても大事にされているように感じました。

二峰からは急な下り坂になります。白装束の御嶽講信者の方々が唱えながら登ってきました。修行中だから声なんかかけてはいけないだろうと思いじっと黙って通り過ぎるのを待っていると、「こんにちは」と声を掛けられました。何となくほっとしました。
四ノ池を見下ろしながら下るのですが、素晴らしい光景に何度も足が止まりました。


四ノ池~三ノ池 35分

四ノ池は水が溜まっている池というよりも音を立てて流れる小さな川でした。その水は滝になって落ちているようなのですが直接見ることはできませんでした。ロープウェイの飯森高原駅から見られる「幻の滝」です。
歩くだけなら35分程度のものなのですが、ぼけ~っと見とれていて四ノ池から三ノ池の間を1時間20分もかけて歩いていました。
剣ヶ峰に登った時には荒々しい御嶽山のように思っていたのですが、こちらは全く様子が違っていました。四ノ池はお花畑が広がり、三ノ池は豊富な水を満々とさせて生命感に満ちあふれていました。慈しみを感じる光景でした。

三ノ池~五の池小屋 25分


三ノ池から分岐までは大きな石がゴロゴロしています。石の間にはお花がたくさん咲いています。

五の池小屋

今年新館がオープンしました。私は新館の2階で寝ました。とてもシンプルな山小屋です。新館の2階は広間になっているので就寝時はあちこちからイビキが聞こえてきて不思議なハーモニーを奏でていました。(笑)おもしろいな~と思いながらいつの間にか眠っていたので私もハーモニーに参加していたかもしれません。
お料理は手作りを心掛けているらしく家庭的な温かい食事です。写真は夕食ですが、かき揚げの下に普通の天ぷらがあってびっくりしました。すごいボリュームです。お味噌汁の味噌は手作りとのこと。きゅうりにつけて食べてみたかったです。
スタッフの方々がとても親切で、泊まってよかったな~と思いました。

夕焼けは期待したほどではありませんでした。それでもかすかに色づいた所を見つけるのは楽しかったです。外で歯磨きをしながら遠くに映る夕暮れを楽しみました。

<2日目>

夜中に何回か目を覚ましてはいたのですが、まだまだ大丈夫だと思い寝ていました。パチっと目を開けると部屋が少し明るく窓が白く見えました。時計を見ると4時10分。日の出は5時ごろだったのですが、“寝過ごした”と思いました。満月もペルセウス座流星群も見たかったのに明るくなり過ぎていました。
それでも満月は何とか見ることができました。明け方の西の空に沈んでいく満月です。
雲海に浮かぶ白山、北アルプス、八ヶ岳、中央アルプスの奥には富士山も見えました。

5時前には小屋を出る予定でいたのですが、1時間も遅くなり5時40分に出発しました。

五ノ池小屋~摩利支天乗越 25分(小休憩含む)


遠くの山を見るために早く高い山に登りたくて摩利支天山に向かいました。道は石がゴロゴロしています。岩や石に矢印などが描かれているので間違えることはないと思います。乗越までは白山、北アルプス方面が良く見えました。


摩利支天乗越~摩利支天山頂上 往復55分(小休憩含む)

頂上は乗越から30分ほど歩きます。乗越からは稜線の下(南側)を歩くので近くの継母岳や剣ヶ峰方面くらいしか見えなくなってしまいました。
道は崖のような所を歩いて行きますが怖くはありませんでした。石碑がいくつかありました。朝早いせいか花が美しく感じました。
頂上は狭く、3人ぐらいしかいられません。


乗越のすぐ近くには摩利支天山展望台があります。頂上に行かなくても十分景色を楽しめます。なだらかで広いのでゆっくり過ごせます。五の池小屋のお弁当で朝食。

摩利支天山乗越~サイノ河原~二ノ池 50分(小休憩含む)

摩利支天乗越から下る道はゆるやかな下り坂に感じるのですが、登ってくる人たちは大変そうでした。

乗越から30分ほどでサイノ河原に着きます。ここは異様でした。ケルンのように石が積まれた上に石仏が乗っています。どこか薄気味悪く感じました。帰ってきてから「サイノカワラ」を調べてみると「賽の河原」だとわかりました。三途の川の手前の河原で、早死にした子供達が善行を積むために石で塔を作るのです。親のことを思いながら塔を作りお地蔵様に救われます。わかると納得がいく光景でした。
サイノ河原から二ノ池に登っていく始めのところは急坂で岩をよじ登る感じでした。しかし、すぐになだらかな坂になります。

二ノ池~サイノ河原避難小屋 30分

二ノ池は剣ヶ峰に登ったときに上から見てきれいだな~と思っていました。池のほとりから見ても美しい色の池です。

二ノ池からサイノ河原に下る途中にライチョウの親子を見かけました。3羽の子供を連れていました。しばらく様子を見ているとどんどん近付いてきます。目があったような気がしてコンチハと声をかけてみましたがキョトンとしてました。

サイノ河原避難小屋~五の池小屋 30分

避難小屋のすぐ近くから三ノ池方面に行く道があります。下り始めは急で嫌な感じでした。私の苦手な砂地の下り坂です。ストック1本を使って慎重に下りました。
始めの急な下りを除けば道は快適です。右側に三ノ池を見ながら、花もたくさん咲いている楽しい道です。

五の池小屋~三ノ池・四ノ池分岐 往復 45分

1日目とは反対周りにもう一度四ノ池の外輪を回ってみようと思い、三ノ池四ノ池の間の道に向かいました。
下り始めは急な砂地の下り坂です。こんな時にはストックが便利です。1本使用。
下ると四ノ池だけが最初に見えます。そこから東に向かうと三ノ池も見えてきて両方の池が見られます。とてもぜいたくな光景です。陽の射し加減で三ノ池の色は変わり、四ノ池には霧が流れ込み幻想的な光景でした。歩くだけなら45分程度ですが、うっとりと眺めていたので1時間30分近くかけてゆっくりと楽しみました。


四ノ池のガスが切れなくなったので外輪は回らずに五の池小屋に引き返しました。夏はすぐに雲が沸き立つので朝早く四ノ池を回ったほうが良かったのかもしれません。


五の池小屋~濁河温泉登山口 160分(小休憩含む)

よく整備されている分足が速く進みます。剣ヶ峰から飯森高原駅への下りでふくらはぎがひどい筋肉痛になったことがあったので十分注意して静かに下るようにしました。ストック1本を補助的に使いあまり頼らないようにしました。(ストックに頼って歩くとなぜかとても疲れてしまうことがあるので) 履き心地があまり好きではないのですが、テクニカルタイツ(筋肉サポートタイツ)は下り道に効果があったと思います。
途中で「ぶぉ~」と音がしてイノシシか何か動物かと思いギョッとしていたら、山伏に会いました。山伏5人組で唱えながら登って来ます。本当にほら貝を鳴らして歩くんだ~と思いながらじっと黙って通り過ぎるのを待っていると「こんにちは」と声を掛けられました。修行中の人にも挨拶していいんだ~とわかった山登りでした。

お薦めの温泉

登山口は既に濁河温泉です。
市営の露天風呂もあり早朝から営業しています。露天風呂だけで野趣あふれる温泉でした。設備はシンプルで洗い場には水道・シャワーが2箇所。ドライヤーはありませんでした。お風呂の脇には、アブが来るのかハエ叩きが置いてありました。
旅館で日帰り入浴できる所もあります。

記者の感想

御嶽山剣ヶ峰に登る時に御嶽山について調べたことはあったのですが、その後池のことはすっかり忘れていました。
継子岳を薦めてくれたのは山を熟知したお花大好きな女性です。山容が素晴らしいと薦めてくれたのです。継子岳と聞いてもピンと来なくて調べてみると、シーズンにはお花が咲き素敵なようでした。継子岳から北アルプス方面を見ることはできませんでしたが、眺めもいいことでしょう。
実際に山に登ってみると「私の知っている御嶽山ではない」とある意味ショックを受けるような素晴らしい山でした。三ノ池や四ノ池のあたりを歩くとうれしいのに心がとても落ち着きます。「慈しみとはこういうものなのか」と思いました。本当に御嶽山は神様の山なんだな~と実感しました。
  【2011年8月13~14日実施 登山者・記者 アルプスちえみ】